15世紀から19世紀までの西洋のナチュラルヒストリー(自然誌/博物学)とアート(美術/技芸)のつながりに注目し、人間が表してきた自然のすがた・かたちを紹介する展覧会「自然という書物―15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート」が東京の町田市立国際版画美術館で開催される。会期は3月18日〜5月21日。
本展では、人間が古くからどのように自然物や自然環境(動物や植物、微小な生物、地球上の地勢や地質など)を記述・描写してきたのかという歴史を振り返るとともに、それら自然物のすがた・かたちを展覧。そこから人がどのようなイメージを膨らませ創作活動を行ってきたかという事例も交えて、人と自然の歴史を書物を通じて読み解いていくというもの。また、その普及に多大なる貢献をしてきた活字と版画などの印刷技術にも着目する。
会場は全4章で構成。「第一章 想像と現実のあわい―15、16世紀」では中世ヨーロッパの自然観を紹介。実際の観察に基づき記述・描写され、刊行された資料を展示する。「第二章 もっと近くで、さらに遠くへ―17、18世紀」では、望遠鏡や顕微鏡といった光学器械でとらえられた自然の細部や「大航海時代」による観察対象の拡大に着目。この時代に主流であった銅版画による精緻な表現も見どころのひとつだ。
「第三章 世界を分け、腑分け、分け入る―18、19世紀」では、今日の動植物分類体系の礎とも言える『自然の体系』『動物誌』を紹介。同時期に進歩を見せた多色刷りやリトグラフなどの版画技法の発展も、その解像度を高めるきっかけであった。「第四章 デザイン、ピクチャレスク、ファンタジー」では、人間が自然へ向けてきたまなざしが美術にも反映されてきた例を展示。自然の造形を活かした「デザイン」、自然を絵画的に表現する「ピクチャレスク」、自然を霊感源とした「ファンタジー」から、自然と美術のつながりを紐解くものとなっている。
なお、本展にあわせてミニ企画展「日本の自然と多色摺木版の世界」が開催されるほか、関連イベントとして講師に菅靖子(津田塾大学英語英文学科教授、デザイン史・日英デザイン交流史)、桑木野幸司(大阪大学人文学研究科教授、西洋美術・建築・都市史)を招いた記念講演会、ヒロ・ヒライ(BHチャンネル主催、ルネサンス学)、橋本麻里(エディター、金沢工業大学客員教授)、山本貴光(文筆家、ゲーム作家)、藤村拓也(本展担当学芸員)らが出演するYoutubeでのスペシャルトークイベント、子供向けワークショップなど幅広いイベントが数多く実施予定だ。本展に足を運ぶ際はこちらもあわせてチェックしてほしい。