今年開館15周年となる国立新美術館で、現代美術家・李禹煥(リ・ウファン)の大規模回顧展「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」が開催される。会期は8月10日〜11月7日。
李は1936年韓国・慶尚南道生まれ。ソウル大学校美術大学入学後の1956年に来日し日本大学で哲学を学び、東洋と西洋の様々な思想や文学を吸収した。1960年代末から始まった戦後日本美術におけるもっとも重要な動向「もの派」を牽引する作家として世界的に知られており、すべては相互関係のもとにあるという世界観を、 視覚芸術だけでなく著述においても展開。1969年には論考「事物から存在へ」で美術出版社芸術評論賞に入選。また71年には『出会いを求めて』を刊行し、「もの派」の理論的支柱にもなった。
これまで、グッゲンハイム美術館(2011)、ヴェルサイユ宮殿(2014)、ポンピドゥー・センター・メッス(2019)などで個展を開催。2010年には直島に李禹煥美術館が開館するなど、その作品は多くの人々を魅了してきた。
本展は、李禹煥にとって東京では初の大規模個展であり、日本では横浜美術館で2005年に開かれた「李禹煥 余白の芸術展」以来のもの。
展覧会は彫刻と絵画の2セクションに分けられ、それぞれの展開が時系列で示されるという。絵画ではキャンバスにピンクの蛍光塗料を用いた三連画《風景Ⅰ》《風景Ⅱ》《風景Ⅲ》(すべて1968)や、石や鉄、ガラスを組み合わせた立体作品《関係項》(1968/2019)など、初期の代表作も展示される。また本展では、野外展示場でアーチ状の野外彫刻の新作を披露する。
人間中心主義の再考が求められる現代において、ものともの、ものと人との関係を問いかける李禹煥の作品は鑑賞者に何を訴えかけるのか。期待が高まる展覧会だ。なお本展は兵庫県立美術館に巡回する。