先端医療にまつわる2作品を展示。岡田裕子が個展「ダブルフューチャー」で紡ぐ未来の物語

絵画や写真、ビデオアート、パフォーマンスなど多様な表現を行うアーティスト・岡田裕子の個展「ダブル・フューチャー 」が、東京・市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで開催される。会期は7月10日〜8月10日。

岡田裕子 未来図 #2 2003 © OKADA Hiroko Courtesy Mizuma Art Gallery

 恋愛や結婚、出産、子育てなどの実体験を題材に、現代社会へのアイロニーを表現するアーティスト・岡田裕子の個展「ダブル・フューチャー 」が、東京・市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで開催される。

 本展は、新作《エンゲージド・ボディ》と、02年に制作された《俺の産んだ子》(2019年改訂版)で構成。19年2月に恵比寿映像祭で発表され話題となった《エンゲージド・ボディ》は、オーストリア・リンツのアルスエレクトロニカセンターで1年間の常設展示が決まるなど、海外からも注目を集めた作品だ。

 同作は、再生医療がさらなる発展を遂げ、ヒトの細胞株があらゆる身体の部分に分化するようになり、他者へ提供できるようになった未来の世界を舞台に描かれる。そういったなかでドナーとレシピエントの間では、契りの証として再生した内臓をジュエリーに仕立てて贈り物をする文化が芽生えるという架空のストーリーに沿って展開されていく。本展では、同作を着想した際のドローイングや新作の平面作品などを加えてインスタレーションとして再構成される。

「第11回恵比寿映像祭 トランスポジション 変わる術」(東京都写真美術館)展示風景より、
岡田裕子《エンゲージド・ボディ》(2019)
撮影=大島健一郎 写真提供=東京都写真美術館
© OKADA Hiroko Courtesy Mizuma Art Gallery
岡田裕子 俺の産んだ子 2002 / 2019
© OKADA Hiroko Courtesy Mizuma Art Gallery

​ いっぽう17年前に制作された《俺の産んだ子》は、男性が妊娠・出産するという架空の未来を描いた映像作品だ。日本の女性たちの妊娠や出産にまつわる様々な事柄、母となる女性の生き方への周囲の理解の乏しさ、その喜びとストレス、子育て問題、少子化問題など、制作当時の岡田自身が妊娠、出産を経験することで得た気づきが作品のベースになっている。

 これまで北九州市立美術館(2002)、東京都現代美術館(2005)、ブルックリン美術館(2007)など国内外の美術館で展示の機会を重ねてきた同作。本展では、BGMをオリジナル曲として新たに作成し、再編集したものが初めて公開される。

 先端医療にまつわるふたつの作品は、この17年の間に大きく変化した技術の革新性を感じることができるいっぽうで、いまだに変わらない差別や経済、生活環境などといった人間社会の問題も浮き彫りにする。会期中に岡田は、この2作品を中心とした自身初となる作品集を刊行。刊行記念イベントなどの詳細は、追ってギャラリーの公式サイトやSNSなどで告知される。

岡田裕子 エンゲージド・ボディ:脳血管のティアラ 2019
撮影=大島健一郎 写真提供=東京都写真美術館
© OKADA Hiroko Courtesy Mizuma Art Gallery

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