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「トランスポジション」から映像の現在を思考する。「第11回 恵比寿映像祭」が東京都写真美術館ほか数ヶ所でスタート

展示、上映、トークイベント、シンポジウムなど様々なプログラムを擁するアートと映像の祭典、恵比寿映像祭が開幕する。「トランスポジション 変わる術」をテーマに、67組79名の作品を紹介する第11回の見どころとは?

展示風景より、さわひらき《platter》(2019)

 いまいる位置から違うところへ移動するという意味の「トランスポジション」をテーマに、過去10回の実践を踏まえて新たなスタートを切った今年の第11回恵比寿映像祭。今回は、表現上の/時空や視点の/異文化間の/身体観や世界観の「トランスポジション」を、映像やアートを通して能動的に体験できるようなフェスティバルを目指す。

 東京都写真美術館の展示の冒頭を飾るのは、レン・ライ(1901~80)の作品だ。フィルムに直接描画することで制作されたダイレクト・アニメーション《カラー・ボックス》や、当時発明の途上にあったカラー写真の現像技術を用いた1930年代の実験的作品《レインボー・ダンス》が空間に配置され、色とかたちの躍動感を感じることができる。

展示風景より、レン・ライの作品が並ぶ
展示風景より、岡田裕子《エンゲージド・ボディ》(2019)

 地主麻衣子はソメイヨシノにまつわるアニメーション《わたしはあなたの一部じゃない》、カメラマンをモチーフとした映像作品《テレパシーについて》の2つの新作をインスタレーションとして展示。岡田裕子は再生医療に着想を得て、3Dスキャンした自身の臓器や血管をジュエリーに見立てた新作《エンゲージド・ボディ》を発表している。

 そして、デジタル・アートとデザインのコレクティヴであるユニヴァーサル・エヴリシングによる、群衆の動きの変化をシュミレーションした映像作品《トライブス》、9チャンネルのビデオ・インスタレーションで「ある日突然歌いだした彫刻」をめぐるナラティヴを展開するカロリナ・ブレグワの《広場》も見どころのひとつだ。

展示風景より、ユニヴァーサル・エヴリシング《トライブス》(2018)

 そのほかにも、黒川良一は肉眼では感知できないナノレベルデータをもとに、原子スケールの空間を旅するようなオーディオ・ビジュアル・インスタレーションを展示。ミハイル・カリキスは7歳の子供たちと環境問題をめぐる議論を行い、「音」にフォーカスした映像作品《とくべつな抗議活動》をつくり上げた。

展示風景より、黒川良一《ad/ab Atom》(2017)

 いっぽう、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場のオフサイト展示では、さわひらきが新作《platter》を発表。サーカステントの内部には、さわが世界各国で撮り溜めたという映像のコラージュが投影され、日常的な想像の世界に没入することができる。

 また日仏会館では、映画監督・三宅唱と山口情報芸術センター[YCAM]による映像インスタレーション《ワールドツアー》を展示。同作は三宅がiPhoneで日々を撮影した「無言日記」シリーズを原点として、10数名のYCAMスタッフと三宅が撮影した2万におよぶカットから制作された映像インスタレーションを、今回のために再構成したものだ。

展示風景より、三宅唱+YCAM《ワールドツアー》(2018)

 これら展示のほかにも、バスマ・アルシャリフによる《ウロボロス》、科学史家のダナ・ハラウェイのドキュメンタリー《生き延びるための物語り》などのプレミア上映、シンポジウム、出展作家によるラウンジトークなど多彩なプログラムが実施される15日間の「恵比寿映像祭」で、様々な「トランスポジション」を味わってみてほしい。

出展作家(一部)の様子

編集部

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