「異文化を受容する」だけでは終わらせたくない
──ありがとうございます。最後に、いまこの展覧会を日本で行うことの意義について、上田さんの考えをお聞かせください。
今回展示されている作品のなかでも、私も図版でしか見たことがなかった作品がいくつかありました。初めてその作品を見たとき、その完成度というか視覚的強度に驚かされました。当初は作品についてきちんと伝えるために、図録に載せるようなしっかりとした解説を会場内にも掲示する必要があると思っていました。でも作品を見たら、その完成度からもやっぱり私の解説はいらないなって思うことも結構あって。鑑賞者の方々には、最初はとにかく作品に出会ってほしいという思いがあります。その後に解説を見ていただくと、ビジュアルの部分だけではない、作品の奥にある明暗が見えてくると思います。展示されている作品には、それを伝えるだけの強度がありますから。
しかし、日本でただ紹介するだけでは「アボリジナル・アートってすごくおもしろいね」だけで終わってしまう可能性がある。企画の意図として、先住民やオーストラリアといった異国の文化をただ受容するだけの展覧会にはしたくなかった。彼女たちが作品を通じて伝えてくれているメッセージを自分たちの生きる社会や文化と照らしあわせながら見ることで、新たな気づきがあるのではないかと思っています。




















