アボリジナル・アートにおける女性作家
──なるほど。先ほども少し話題に挙げましたが、今回の展覧会はアボリジナル・アートのなかでも、女性作家にフォーカスをしていますね。そのねらいについて改めて教えてください。
私がアーティゾン美術館に入職する以前から同館ではアボリジナル・アートの収集・研究がなされていましたが、コレクションを見るとすでに女性作家の作品が大部分を占めていました。オーストラリア美術を収集していくと自ずと女性作家の作品が多くなる。それはやはり国内外で高く評価されている女性作家が数多くいるということでもあると思います。そして、そのなかには先住民のバックグラウンドを持つ作家も数多くいる。そのことについて展覧会を通してきちんと問題提起ができ、ひとつのテーマとして掘り下げることができるのではないかと思ったのが起点でもありますね。
──今回の出展作家による作品を見てもわかる通り、アボリジナル・アートの女性作家というカテゴリにおいても多様さや差異などが見受けられると思います。そのあたりをどのように見せていくことを心がけていましたか? 作家の選定にも関わってくることかと思います。
作家の選定にあたっては、コレクションとしてすでに所蔵していたエミリー、ノンギルンガ・マラウィリ、サリー・ガボリの3人は当初より含める予定でした。すでに国際的にも高い評価を得ている作家たちですし、活動地域や表現手法も異なります。ただこの3人だけで現代アボリジナル・アートを包括的に紹介できるかといったらできない。なぜなら、彼女たちはコミュニティに根付いた作家です。しかし現在アボリジナルの人口の8割は都市部で暮らしています。つまり、現代のアボリジナル・アートを語るならば、都市部で活躍をしている作家を含む必要があります。そこで選んだのが、マリィ・クラーク、ジュリー・ゴフ、イワニ・スケース、ジュディ・ワトソンの4人でした。


さらに作家を選定しようと考えたとき、重視したのは地域です。会場にもアボリジナル・コミュニティの分布を示した地図を掲示していますが、本当に細かく分かれているのが視覚的にもわかります。出品作家は全員異なるコミュニティ出身です。またアボリジナル・アートを語るうえで重要なグループ活動を見せるために、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズという女性アーティストたちによるコレクティブを追加しました。集団で文化を継承してきたアボリジナルの人々にとって、グループ活動は重要な要素なのです。

石橋財団アーティゾン美術館
©︎ Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY




















