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対談:なみちえ×吉國元。「横断者」として生きる。日本とアフリカのはざまで模索する、アイデンティティと表現【5/5ページ】

捉え直し、回帰するために

なみちえ 私も吉國さんも、芸術家としての使命があるんですよね。植民地主義的な視点からの解放もそうですし、私の言う「逃げる」という言葉が近いと思うんですけど、原点回帰することというか。

吉國 互いに、制作することで必然的に自分のルーツにぶち当たりますよね。表現する手段がなかったら、こういった葛藤に対する落としどころを見つけるのは難しかったと思います。

なみちえ だから私よりも苦しい思いをしているミックスルーツの人はたくさんいると思うんです。その人たちの代弁者でありたいという意味でも、西洋的なものではない部分で日本を捉えることは大事だと思っています。

「―モンスーンに吹かれたように― 大移動と交流のアフリカ‐アジアの現代美術」に出品されているなみちえの「kigroom」シリーズ 写真提供:岐阜県美術館
吉國による「来者たち」シリーズ Courtesy of the artist
吉國元《タクシー》(2020)ダンボールにオイルパステル、アクリル、合成樹脂塗料 Courtesy of the artist

吉國 日本のアートシーンでもアフリカに関わるアートに触れる機会は徐々に増えてきていますよね。例えば「KYOTOGRAPHIE」に毎回アフリカの作家が紹介されていたり、アフリカの作家を扱うギャラリーができたり。いっぽうで排外主義的言説が当たり前に聞かれるようになってきたことには恐ろしさを感じます。それはヘイトであって、意見のひとつとも言えないものなのに。でも、多様性ということでは受け入れがたい亀裂や衝突を前にしても、アートは人と人が出会うことの可能性に懸けるメディアだと思う。こういう時代だからこそ本展が開催されたことや、なみちえさんの活動に希望を感じます。互いにジャンルのあいだをいくようなスタンスなので評価につながりにくい面もあると思いますが、あえてそうやってきた面もありますね。

なみちえ 横断者ですよね。メジャーの波に乗らなくても生きていけると知ったのは幸せなことだと思うので、長いタームで芸術や価値観について考えていきたい。植え付けられてしまった偏りをどう元に戻し、つねに捉え直していけるかを問い続けていきたいです。

かつては下駄屋だったアフリカ屋の店内。西アフリカから直輸入された大胆なデザインの生地の数々が並ぶ

編集部