植田正治を訪ねるフォトウォークから見えてきた、Sigmaがアートで目指すもの【3/4ページ】

植田正治のエッセンスに触れる:2日目

 2日目は、境港市にある植田の生家を訪ねた。国の指定文化財である生家は明治中期頃の町屋建築で、囲炉裏のある応接間や天井までの大きな一枚ガラスの窓のある作業場などは、植田の好みで改築されたもの。いまでも彼の息づかいが生きている空間だ。

植田正治生家

 現在は非公開となっている建物内部を見学できるだけでなく、保管されている植田の写真を亨氏が見せてくれる。美術館であれば額装されている作品を素のまま手にとって見られるという稀少な機会に、時を忘れて参加者の熱も高まる。奈良原一高をはじめとした、有名写真家の作品が紛れ込んでいるのも、生前の交流を感じさせて興味深い。

植田正治生家にて、植田亨氏と植田正治の使用していたカメラ
植田正治のプリントの鑑賞

 境港に揚がる魚介のランチを堪能した後、参加者は歴史ある境港の街を被写体に自由に撮影を行った。時代を感じさせる家並みの残る町で目に留まった小さな風景を切りとる者、烏賊釣船が停泊する入江の風景をとらえる者、市場で生活の息吹を写す者。植田が生まれ、生き、写真に残したものをかみしめながら、それぞれのフォトウォークが繰り広げられた。濃密な2日間の経験から生まれる彼らの「作品」が、今後どんな調べを奏でるのかが楽しみだ。

境港でのフォトウォーク

編集部

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