保存された映画は「新たな文化を生み出す土壌」
──過去の映画にアクセスできることは、現代の映画監督やクリエイターの創作にどのような影響を与えるのでしょうか。
栩木 映画の大きな強みは、総合芸術であることです。演技だけではなく、美術、衣装、撮影技術など、様々なものが含まれている。
そしてもうひとつ、映画は非常に大衆的な芸術でもあります。だから映画監督だけではなく、マンガ家、アニメーター、デザイナーなど、多くのクリエイターが映画からアイデアやストーリー、キャラクター、世界観を受け取り、互いに影響を与え合ってきました。
いっぽうで映画は、長い間「保存し、世代を越えて継承するもの」というよりも、消耗品として扱われがちな側面もありました。
だからこそ、より多くの映画が適切に保存され、アクセスしやすい状態で維持され、本来の姿で体験できるようになれば、それは新たな才能や新たな文化を生み出す土壌になっていくと思います。
──映画は公開期間が終われば、どこで見られるかがかわからなくなってしまうこともあります。
栩木 まさに「アクセスできるかどうか」は非常に重要です。映画をどのように体験し、その体験を次の世代に受け継いでいくのか。公共機関だからこそできることもあれば、公共機関だからできないこともあります。ただ、公共機関だからこそできる「アクセスの保障」をどこまで実現できるか。
収集・保存という活動を、いかに多くの人へ還元できるかが、私たちにとって非常に重要だと思っています。
──最後に、これからの映画アーカイブはどのような場所であるべきだとお考えでしょうか。
栩木 より開かれた映画アーカイブであることが重要だと思っています。アーカイブされた映画には、大きくいくつかの価値があります。
ひとつは、新たな創作を生み出す源になること。アーカイブの世界では「クリエイティブ・リユース」と呼ばれることもあります。
2つ目は、文化芸術としての価値です。映画を見た人の感情や思考を揺さぶり、幸福感や充実感を与える。
そして3つ目は、社会的な課題について考えるための情報を提供することです。映画のなかには、様々な時代や社会についての情報が蓄積されています。それを社会のなかでどう生かしていくのか。
映画アーカイブがある意味で「社会のインフラ」であるとすれば、社会に対してどのように開かれていくのかを考えることが、これからますます重要になると思っています。



















