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戦前の日本映画は9割が失われた。国立映画アーカイブ館長・栩木章が語る、映画を未来に残すということ【4/5ページ】

 「大量動員」ができない映画アーカイブの運営

──ここからは運営について伺います。現在、国は「第6期中期目標」(*1)を定め、国立博物館・美術館に対して自己収入の向上を求めています。国立映画アーカイブではどのような取り組みを行っていますか。

栩木 当館の自己収入としてもっとも大きいのは、上映や展示の入館料です。ただ、美術館や博物館と違って、映画館は座って鑑賞するものですから、座席数が決まっていますし、上映回数にも限界があります。つまり、大量動員によって収入を増やすことには構造的な限界[章栩1] がある。そこで劇場や会議室の貸出、所蔵フィルムや資料をデジタル化してテレビ局などに提供すること、あるいはグッズ販売などにも取り組んでいます。

 それでも、映画アーカイブのように非常に長いスパンで事業を行う組織の安定性を確保するのは難しい。そのため、私が4月に館長に就任して以降は、寄付金や協賛金など、外部資金を求める取り組みも積極的に進めています。

──そのひとつが今回のクラウドファンディング(*2)ですね。

栩木 そうです。クラウドファンディングの第一の目的は、やはり外部資金を調達することです。今年度は予算が非常に厳しく、計画している活動を予定通り進めるために、市民の皆さんに直接お願いして支援を求めています。

 ただし、このクラウドファンディングだけで財務状況を安定させられるとは考えていません。今回のクラウドファンディングは、ある意味では「一時的な猶予」を与えていただいているものだと考えています。

 次年度以降については、国費として措置される運営費交付金や、概算要求などを通じた政策的な予算がやはり基本です。そのうえで不足する部分を、寄付や協賛などの外部資金によって、より安定的に補っていく必要があると思います。

クラウドファンディングサイト「READY FOR」より(9月17日時点) https://readyfor.jp/projects/NFAJ2026

──実際にクラウドファンディングを始めて、反響はいかがでしたか。

栩木 想像以上でした。寄付してくださった方々のコメントや、映画人からの応援メッセージを読むと、私たちが考えていた以上に、国立映画アーカイブの現状を「自分事」として心配していただいていることがわかりました。

 映画人のなかには、フィルムセンター時代からここで多くの映画を見て、「自分を育ててくれた」と言ってくださる方もいます。

 また、自分の作品のフィルムをこちらに寄贈し、長年その管理を託してくださっている監督もいます。そうした言葉から、ここが映画文化にとって「なくてはならない場所」だと思っていただいていることを強く感じます。その期待が大きいぶん、私たちの責任も大きいのだと思います。

*1──文化庁および文部科学省が所管する独立行政法人国立美術館と国立文化財機構が令和8年度(2026年度)からの5年間で達成すべきものとして策定。展示事業の自己収入比率を最終年度までに65パーセント以上に引き上げること、次期中期目標期間中には、法人全体で自己収入比率100パーセントを目指すことが明記された。また中期目標期間の4年目において、自己収入額の割合が4割を下回っている場合、「社会的な役割を十分に果たせていないとみなされた館」とされ、再編の対象となりうるとされている
*2──クラウドファンディングサイト「RAEDYFOR」において、初のクラウドファンディングを実施。当初目標の1億円は達成し、9月17日時点で1億2438万5000円を集めた。

編集部