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地中海の小島から考える、アートセンターと地域の関係。ハウザー&ワース メノルカを訪ねて【5/5ページ】

アートセンターから、島の文化生態系へ

 そ開館から5年を経て、地域との関係はイジャ・デル・レイの外側にも広がりつつある。

 今年は、アーティストのラシッド・ジョンソンとシリー・ホヴセピアンによって、マオー市内に新たなアーティスト/ライター・イン・レジデンス「The Residency at Casa Gràcia」が設立された。ハウザー&ワースが運営するプログラムではないものの、滞在者はハウザー&ワース メノルカのチームによるサポートを受ける。2027年からは年間5名を受け入れ、アーティストは最長3ヶ月、ライターは最長6ヶ月にわたり、成果発表を義務づけられることなく島で制作や思索に取り組む。

The Residency at Casa Gràciaの様子 Courtesy Rashid Johnson and Sheree Hovsepian. Photo by Daniel Schäfer

 ジョンソンはメノルカについて、「思考と創造性を広げてくれる、ゆっくりとした時間、明晰さ、開放性」がある場所だと語る。アーティストが島に長期滞在し、その土地から影響を受けながら地域とも関係を結んでいくこと。それは、ハウザー&ワース メノルカがこの5年間に築こうとしてきた関係とも重なる。

 ハウザー&ワースはまた、メノルカには以前から、その美しさや静けさ、独特の風土に惹かれたアーティストや作家、映画監督、音楽家が集まってきたと強調する。例えばエドゥアルド・チリーダも、この島から大きな創作上の刺激を受けたひとりだという。

アーティストは最長3ヶ月、ライターは最長6ヶ月にわたり、成果発表を義務づけられることなく島で滞在制作ができる Courtesy Rashid Johnson and Sheree Hovsepian. Photo by Daniel Schäfer

 そのうえで、自らの役割を「すでに存在する文化的なエコシステムを支え、そこに貢献すること」だと位置づける。異なる視点に対して開かれ、地域とのパートナーシップを育てること。それによって交流や協働、新たなアイデアが生まれる環境をつくることを目指しているという。

 グローバルに展開するメガギャラリーと、人口規模も環境も限られた地中海の島。その関係には、観光や地域社会への影響を含め、今後も検証されるべき側面があるだろう。

マオー港 Photo by Davide Bonaldo

 しかし、イジャ・デル・レイを歩いて見えてくるのは、少なくともハウザー&ワースによるここでの活動が、展覧会という枠だけには収まらなくなっていることだ。歴史的建築の保存、自然環境、教育、食、そして島に暮らす人々との関係までを含め、「場所とともにアートセンターをつくる」とは何を意味するのか。ハウザー&ワース メノルカの5年間は、その問いに答えるためのひとつのヒントとなっている。

編集部

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