「方向を失う」ことから、地中海を考える
こうした場所の特性は、現在開催されている展覧会「Directionless」(〜10月25日)にも入り込んでいる。
アーティストのラシッド・ジョンソンが企画し、フィレレイ・バエズ、チャールズ・ゲインズ、クリスティーナ・イグレシアスの3名が作家選定に参加した本展は、10ヶ国以上から28名のアーティストが集う、同センター史上最大規模の展覧会だ。作品は展示室だけでなく、庭園や建物のファサード、島内の小径へと広がっている。

タイトルが示すのは、「方向を失うこと」だ。政治や社会の既存の座標軸が揺らぐ現在を、解決すべき混乱としてではなく、新たな関係や意味を想像するための「宙吊り」や「漂流」の状態としてとらえる。異なる世代、地域、表現を横断する作品群は、ひとつの明確な回答へと収束することなく、未知の状況をいかに進むことができるのかを問いかける。

なかでも、屋外展示の構成を担ったイグレシアスは、イジャ・デル・レイという場所を地中海の歴史と結びつけている。彼女が選んだアリ・シェリ、モナ・ハトゥム、ラヤーン・タベットらの作品は、庭園や建築、水辺と関係を結びながら配置された。

イグレシアスは、古代文明と移民の歴史を抱える今日の地中海もまた、「宙吊りと不確実性の空間」だと指摘する。そして西地中海に位置するメノルカから、海を人々を隔てる境界ではなく、文化を結びつける「液体のフォーラム」としてとらえ直すことを提案している。
展示室から屋外へ出るたびに海が視界に入り、作品から作品へと歩く身体そのものが島の地形を経験する。ここでは作品を見ることと、イジャ・デル・レイという場所を歩くことを完全に切り離すことは難しい。




















