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ハウザー&ワースの新しい香港ギャラリーがオープン。利便性や地域へのコミットメントを向上

世界中に複数のギャラリースペースを持っているハウザー&ワースが、香港における新しいスペースを1月24日にオープンさせた。こけら落としでは、中国人アーティスト・張恩利(チャン・エンリー)の個展「Faces」が3月9日まで開催されている。

文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

ハウザー&ワース香港の新しいスペースの外観Courtesy Hauser & Wirth. Photo by JJYPHOTO

 昨年3月、香港におけるギャラリースペースの移転を発表したハウザー&ワース。この新しいスペースが1月24日にオープンした。

 ハウザー&ワースは、イワン・ワースとマヌエラ・ワース、ウルスラ・ハウザーが1992年にスイスで創業したギャラリー。現在はロンドン、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルス、チューリッヒなどに約15の展示スペースを持っているほか、イギリス・サマセットやスペイン・メノルカ島ではアートセンターも運営している。

 2018年、同ギャラリーはそのアジア初かつ唯一のブランチを香港・セントラルにある高層ビル「H Queen’s」にオープン。これまでルイーズ・ブルジョワやフィリップ・ガストンなど20世紀美術の巨匠をはじめ、ロニ・ホーン、マーク・ブラッドフォード、ゼン・ファンジー、ニコラ・パーティなどの個展を含む20の展覧会を行ってきた。

オープニング展「Zhang Enli: Faces」の展示風景より
Courtesy the artist and Hauser & Wirth. Photo by JJYPHOTO

 展覧会のほか、同スペースではトーク、パフォーマンス、ラーニング、学校訪問など、80以上のイベントも開催。同ギャラリーのマネージング・パートナー・アジアであるエレイン・クォックは、今回の移転は「(取り扱い)アーティストやプログラムに対する地域の方々の熱意のおかげだ」としつつ、「私たちはこの地域で存在感を高めていくというコミットメントを示すものだ」と述べている。

 旧スペースがあったH Queen’sには、ペースやデイヴィッド・ツヴィルナーなどのメガギャラリーが入居しているものの、大規模な作品のための搬入口がないため、野心的なプログラムの実現が難しい。また、展覧会のオープニングなど、同ビル内で大規模なイベントが行われる際には、エントランスのエレベーターの前に長蛇の列がつくられることが多く、アクセスの不便さにも不満の声がよくある。

 新しいスペースでは、こうした問題が解決されている。H Queen’sから徒歩5分の距離にあり、アイス・ハウス・ストリート、ダデル・ストリート、クイーンズ・ロードが交差するビルの1階と2階に位置するこのスペースでは、物流上の問題はもちろん、通りに面した床から天井まである2つの大きな窓は、セントラルを行き交う人々にアートを鑑賞する機会を提供している。

オープニング展「Zhang Enli: Faces」の展示風景より
Courtesy the artist and Hauser & Wirth. Photo by JJYPHOTO

 同ギャラリーの社長であるイワン・ワースは、「コミュニティの一部になることは、ハウザー&ワースの理念であり、ビジョンであり、原則でもある」としており、次のように話している。「アクセスの便利さは鑑賞者だけでなく、アーティストにとっても重要だ。それがあれば、素晴らしい作品を持ち込むことができる。アーティストに新しい素晴らしいスペースを提供することが、当ギャラリーの基本理念のひとつ。アーティストはつねに私たちの関心と考えの中心にいる」。

 新しいスペースのオープニングとともに、中国人アーティスト・張恩利(チャン・エンリー)の個展「Faces」(〜3月9日)が開催されている。1階のスペースでは、2022年から23年にかけて制作されたチャンの新作絵画が展示。2階にはビューイングルームが設けられており、今後は展覧会スペースの一部として利用されるという。

オープニング展「Zhang Enli: Faces」の展示風景より
Courtesy the artist and Hauser & Wirth. Photo by JJYPHOTO

 香港の西九龍文化地区には、オークションハウスのフィリップスが昨年3月に新しいアジア本社をオープン。またクリスティーズサザビーズも今年、それぞれセントラルとアドミラリティに新本社のオープンを予定している。前出のクォックは、「香港(のアートシーン)はこれからますます盛り上がっていくだろう」と期待を寄せている。

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