2018年10月から約4ヶ月にわたって開催された「フェルメール展」(上野の森美術館、2018年10月5日〜2月3日)が、2019年の上半期展覧会入場者数でトップとなった。入場者数は68万3485人で、1日あたり5649人が訪れた計算になる。
同展では、フェルメールの代表作である《牛乳を注ぐ女》(1660頃)をはじめ、過去最多となる9点(期間限定を含む)のフェルメール作品が並び、会期終盤の2019年1月9日~2月3日には、日本初公開となる《取り持ち女》も展示された。
2008年の「フェルメール展」(東京都美術館、当時の展示点数は7点)では93万人という異例の来場者数を記録したフェルメール。日時指定入場制というチャレンジングなシステム、あるいは前売り券(一般)で2500円という価格設定もあってか、この数字にはおよばない結果となったが、68万人超えは2016年以降の展覧会で最多。根強いフェルメール人気を裏付けたと言えるだろう。
なお、3位には「フェルメール展」大阪展(大阪市立美術館、2月16日~5月12日)が54万1651人でランクイン。両展をあわせると120万人以上という数字となった。
2位は同じく回顧展である「ムンク展―共鳴する魂の叫び」(東京都美術館、2018年10月27日~1月20日)の66万9846人。1日あたりの入場者数ではフェルメール展を大きく上回る8931人だ。
100パーセントムンクの作品で構成された同展では、オスロ市立ムンク美術館が所蔵するムンク作品の油彩《自画像》(1882)、《絶望》(1893-94)、《星月夜》(1922-24)などを含む、約100点(うち油彩は約60点)の作品を一堂に紹介。なかでも今回が初来日となったオスロ市立ムンク美術館所蔵のテンペラ・油彩画の《叫び》(1910?)が大きな呼び水となったことは間違いないだろう。加えて、他館への巡回がなかったこともこの数字に結びついた要因のひとつと考えられる。
このほか、現代美術では「六本木クロッシング2019展:つないでみる」(森美術館、2月9日~5月26日)が38万4814人(六本木ヒルズ展望台 東京シティビューとの共通チケット)となったほか、東京都写真美術館を中心に開催された「第11回恵比寿映像祭」が総入場者数では10位圏外であるものの、入場無料( 定員制プログラムは有料)も手伝ってか、1日あたりでは4282人(連携プログラムを含む。入場者数は6万4223人)という数字を記録した。
加えて、4位の特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」(東京国立博物館、3月26日~6月2日)にも注目したい。総入場者数は46万3991人だが、1日あたりの入場者数では「ムンク展」に次ぐ7484人。空海が密教の教えを視覚化するために構想した東寺講堂の「立体曼荼羅」を構成する21体の仏像から史上最多の15体が並び、話題を集めた。
2019年下半期の行方は?
なお、今回の集計対象には入っていないが、東京都美術館の「クリムト展 ウィーンと日本 1900」(4月23日〜7月10日)は57万7828人を記録。日本初公開となった《女の三世代》(1905)など、官能的なクリムトの人生を丸ごと紹介した同展は、2019年全体でも上位に入ることとなるだろう。
このほか、下半期には「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」(国立新美術館、4月24日〜8月5日)、「クリスチャン・ボルタンスキー ‐ Lifetime」(国立新美術館、6月12日~9月2日)、そして「塩田千春展:魂がふるえる」(森美術館、6月20日~10月27日)などが控える。とくにボルタンスキーと塩田千春という現代美術家がどれほどの人々を魅了するのかに注目したい。