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ミュシャ、国宝、運慶が60万人超え。 2017年 美術展覧会入場者数 TOP10

数多くの展覧会が開催された2017年を数字で回顧。美術館・博物館で行われた展覧会の入場者数TOP10を紹介する。※対象展覧会は2017年1月1日〜11月30日の期間に開催されたもので、2016年から会期がまたいでいるものも含む。12月18日現在で回答がなかったもの、ウェブサイト公開不可のもの、入場者数を公表していないものは含まない。またジャンルは美術、あるいはそれに準ずるものに限る。

ミュシャ展の様子

 2017年、見事に年間1位の座を射止めたのは、国立新美術館で開催された「ミュシャ展」の65万7350人となった。

 同展は、アール・ヌーヴォーを代表するチェコの芸術家、アルフォンス・ミュシャの代表作であり超大作の「スラヴ叙事詩」を、チェコ国外で初めて揃って展示した画期的な展覧会。最大の作品は横8.1メートル、縦6.1メートルにも及び、その巨大さに包み込まれるような体験をした人も多かったのではないだろうか。

「ミュシャ展」会場風景

 会期中は一部の「スラヴ叙事詩」作品が撮影可能とされ、会場では多くの人々がスマートフォンを掲げる姿が見られ、SNSでもシェアされた。また、会期末には美術館の前庭にも入場待ちの行列ができるなど、「列が列を呼ぶ」状況が生まれたことも、動員が伸びる一因となったと思われる。

 

 主催館の国立新美術館は、一昨年の「ルーヴル美術館展 日常を描く」で同様の約66万人を、また昨年の「オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展」でも66万7897人を記録しており、今回の「ミュシャ展」もこれに並ぶ記録となった。

会期末の「ミュシャ展」に並ぶ行列

 2位はこの秋、京都国立博物館で開催された、開館120周年記念の特別展覧会「国宝」展の62万4493人だ。2017年は京都国立博物館開館から120年であり、「国宝」という言葉が生まれてからも120年という節目の年となった。

 同館で41年ぶりとなった今回の国宝展は、その名の通り全出品作品が国宝で構成され、現在国宝に指定されている美術工芸品のうち、およそ4分の1にあたる約200件を展示するなど、一度に貴重な美術品、工芸品を鑑賞できる機会として、多くの動員を記録した。秋の行楽シーズンに加え、JR東海が同展鑑賞専用の新幹線を運行させるなど、観光客誘致への注力も功を奏した結果だろう。

 3位にランクインしたのは、平安時代から鎌倉時代にかけて活躍した仏師・運慶の展覧会で60万439人。東京国立博物館で開催された「運慶展」は、運慶と縁の深い興福寺の中金堂が約300年ぶりに再建されるのを記念して企画されたもの。運慶の初期から晩年までの作品が並ぶとともに、父・康慶や息子・湛慶、康弁ら親子三代の作品を加え、運慶の作風の誕生と継承という視点から展示を構成。作品を360°ぐるりと鑑賞できる、優れた展示デザインが印象に残る展覧会となった。

 このほか、過去最大規模の個展として話題を集めた「草間彌生 わが永遠の魂」は51万8893人で4位に。現存作家の個展として50万人超の数字は、2012〜13年に森美術館で開催された「会田誠展:天才でごめんなさい」の48万8951人(東京シティービュー連動入館者数)を超えており、驚異的な記録と言ってだろう。

「草間彌生 わが永遠の魂」展示風景より。壁面に見えるのが連作「わが永遠の魂」シリーズ

 また、現代美術の分野ではこのほかに、国立新美術館と森美術館が初めて合同で主催した「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」が2館合計で35万4245人を、森美術館の「N・S・ハルシャ展」が30万43人を記録するなど、健闘を見せた。

「サンシャワー展」よりスラシー・クソンウォン《黄金の亡霊(どうして私はあなたがいるところにいないのか)》(2017)

 また、今回は集計対象外となったが、特筆しておきたいのが上野の森美術館で開催された「怖い絵」展(10月7日〜12月17日)だ。ベストセラー『怖い絵』著者・中野京子の監修によって、視覚的な怖さだけではない、様々なタイプの「恐怖」を表現した作品が並んだ同展。「怖い絵」という明快なネーミングや、《レディ・ジェーン・グレイの処刑》を使った強烈な広告ビジュアル、あるいはメディア露出の多さなども手伝って、41万4006人を動員。会期中は最高で200分を超える入場待ち時間を記録するなど、年末の上野で大きな存在感を放っていた。

ポール・ドラローシュによる大作《レディ・ジェーン・グレイの処刑》の前で作品について語る中野
会期末(12月7日)の入場待ちの列

 加えて、建築家・安藤忠雄の大規模個展「安藤忠雄展ー挑戦ー」(9月27日~12月18日)は、30万102人を記録。安藤建築の初期から最新プロジェクトまでを概観し、「光の教会」を美術館の野外展示場に原寸大で再現するなど、これまでの建築展とは一線を画す展覧会として大きな話題を集めた。会期中には安藤本人によるギャラリートークなども数回開催され、世界を代表する建築家に対して、幅広い客層が反応した結果と言えるだろう。

原寸大で再現された「光の教会」

 なお表にあるその他の数字は以下の通りとなっている。

・ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝―ボスを超えて―(東京展) 37万9527人

・アルチンボルド展 36万5562人

・ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション 31万3131人

・ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝―ボスを超えて―(大阪展) 27万8723人

※本記事および記事内画像・表などの無断転載を禁じます

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