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ムンク美術館の《叫び》が初来日。100パーセントムンク作品で構成された「ムンク展—共鳴する魂の叫び」、東京都美術館で開幕

ノルウェーを代表する画家、エドヴァルド・ムンク。その代表作を一堂に公開する回顧展「ムンク展—共鳴する魂の叫び」が東京都美術館で開幕した。100パーセントムンク作品で構成される本展では、約100点(油彩は60点以上)の作品が一堂に紹介されている。(掲載作品はすべてオスロ市立ムンク美術館蔵 All Photographs ©︎Munchmuseet)

会場風景より《叫び》(1910?)、《絶望》(1894)

 《叫び》で広く知られるノルウェーを代表する画家、エドヴァルド・ムンク(1863〜1944)。その人生を回顧する大規模展「ムンク展—鳴する魂の叫び」が、東京都美術館で開幕した。

 2013年頃から開催の準備が進められてきたという本展は、オスロ市立ムンク美術館が所蔵するムンク作品の油彩《自画像》(1882)、《絶望》(1893-94)、《星月夜》(1922-24)などを含む、約100点(うち油彩は約60点)の作品を一堂に紹介するもの。

会場入り口にはムンクの姿
会場風景より、《地獄の自画像》(1903)

 会場は「ムンクとは誰か」「家族ー死と喪失」「夏の夜ー孤独と憂鬱」「魂の叫びー不安と絶望」「接吻、吸血鬼、マドンナ」「男と女ー愛、嫉妬、別れ」「肖像画」「躍動する風景」「画家の晩年」の9章で構成されている。

 オスロ市立ムンク美術館館長のスタイン・オラヴ・ヘンリクセンは本展について「いままでアジアで行われたムンクの回顧展としてはもっとも幅広く、実質的なものです。ムンクの重要でよく知られている作品を多く展示しており、彼の作品や人生がよく表わされてる」と話す。

会場風景より、手前は《自画像》(1882)

 その言葉の通り、ムンクの青年期から晩年までを通覧する本展では、幼くして肉親を失ったムンクが、第二次世界大戦のさなかに亡くなるまでどのような人生を歩んできたのかを、ゆるやかな年代順で主題ごとに紹介。

 数々の自画像から始まり、姉の死を題材にした《病める子Ⅰ》、叶わぬ恋を描いたとされる《夏の夜、人魚》、愛の曖昧さや複雑さを描いた《森の吸血鬼》など多彩な作品を展覧。これらを通して「ムンクとはいったいどのような人物だったのか」をたどる総合的な内容となっている。

会場風景より、ともに《病める子Ⅰ》(1896)
会場風景より、《生命のダンス》(1925)、《灰》(1925)

 なかでもやはり注目の的となるのは、ムンクの代名詞的な存在《叫び》だ。

 手で両耳を塞ぎ、口を大きく開けて道の真ん中に立ち尽くす人物と、フィヨルドの上に広がる色鮮やかな夕暮れ。人間の不安や孤独を表した《叫び》は、版画を除くと世界には4点が現存している。今回展示されるのはそのうちの1点、オスロ市立ムンク美術館所蔵のテンペラ・油彩画の《叫び》(1910?)であり、今回が初来日となる。

 ヘンリクセン館長によると「当館所蔵の《叫び》が当館以外で展示されるのは滅多になく、この8年で2回だけ。そういう意味でも本展は特別です」。

会場風景より、《叫び》(1910?)

 また、ムンク美術館の展覧会およびコレクション部長であるヨン=オーヴェ・スタイハウグは《叫び》について「120年前には中心的な作品ではなかったにもかかわらず、いまこれだけ注目されているのは興味深いと思います」と語る。

 「この作品は、ムンクがとても過激かつ実験的な試みをしていたこと表すもの。極端な絵に、自分の経験に基づいた感情が描れているのです。彼は自分の不安や絶望を伝えるために、視覚的な手法を研究しました。(本作の素材である)厚紙は弱い素材であり、絵を描くのは難しい。そこにテンペラを使うなど、普通ではない方法で自分の感情を伝えようとしたのです」。保存の関係から、ムンク美術館でも常設展示されているわけではないこの《叫び》が見られる本展は、それだけで貴重な機会と言えるだろう。

会場風景より《叫び》(1910?)、《絶望》(1894)

 生涯を通じて、人間の感情や生、あるいは死と向き合い続けてきた画家。その人生を、名作の数々とともに堪能したい。なお、本展は巡回なし。この機会をお見逃しなく。

第1章の会場風景
会場風景。手前は《石版(マドンナ、吸血鬼Ⅱ)》(1895 / 1902)
会場風景より、《疾駆する馬》(1910-12)、《太陽》(1910-13)
会場の最後にある《自画像、時計とベッドの間》(1940-43)

編集部

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