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2017.8.15

アートに関する重要テーマを知る。8月号新着ブックリスト

『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。2017年8月号では、アール・ブリュットの基礎文献や、都市の歴史を紐解く著作など、アートに関する重要なテーマを扱った4冊を取り上げた。

文=中島水緒+松﨑未來

右から『アール・ブリュット─野生芸術の真髄』『非常時のモダニズム 1930年代帝国日本の美術』『詩的言語と絵画─ことばはイメージを表現できるか』『パリ モダニティの首都 新装版』の表紙
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『アール・ブリュットー野生芸術の真髄』

 アール・ブリュットの基礎文献として必ず名前が挙がる、ミシェル・テヴォーの1975年の著作が邦訳された。原始芸術、子どもの芸術、素朴派の作品と比較しながらアール・ブリュットの定義と特殊性を整理したのち、ヴェルフリ、アロイーズをはじめとする作家たちの生育歴と作品を解説。精神分析の知見だけに頼らず、大胆な直観で作品の真相を読み解くテヴォーの手腕に注目。アール・ブリュットの世界を深く味わいたいすべての人に。(中島)

『アール・ブリュットー野生芸術の真髄』

ミシェル・テヴォー=著

人文書院|4800円+税

『非常時のモダニズム 1930年代帝国日本の美術』

 アジア・太平洋戦争勃発前の日本。それは、国家による統制が進んで抵抗勢力がなりを潜め、モダニズムが退潮の気配を示した時代だった。1930年代の美術を専門としてきた研究者が、帝国日本の対外美術戦略をモダニズムとの関わりから検証。英文版『日本美術年鑑』による文化宣伝、芸術競技の展示ももくろまれた近代オリンピック構想、国内外の動向を結ぶキーマンとしての岡本太郎やセリグマンを題材に、1930年代美術の実相を多角的に映し出す。(中島)

『非常時のモダニズム 1930年代帝国日本の美術』

五十殿利治=著

東京大学出版会|7400円+税

『詩的言語と絵画ーことばはイメージを表現できるか』

 古来「絵は詩のごとく、詩は絵のごとく」とうたわれてきたように、絵画と詩は通常の伝達言語では説明しがたいという共通点を持ち、両表現は不可分の関係にあると言える。日本語学をフィールドとする著者が、主に1910年代に活躍した日本の画家・詩人の作品と言説を取り上げ、独自のアプローチで絵画作品を読み解き、詩的言語の分析を試みる。我々が普段曖昧に用いている「イメージ」という語の不可思議さに改めて気づくだろう。(松﨑)

『詩的言語と絵画ーことばはイメージを表現できるか』

今野真二=著

勉誠出版|2800円+税

『パリ モダニティの首都 新装版』

 1948年の二月革命からパリ・コミューンへ。激動期のパリにおける「近代」の誕生を、社会経済地理学の第一人者が検証。著者はマルクス主義を地理学において展開させ、都市空間と社会構造の変化の関係性を丁寧に洗い出していく。様々な階級の目を通して活写される19世紀パリの街の風景、人々の生活の中には、現代にも通ずる社会経済の問題が散見され、まるでパリの街中を歩き回る新聞記者に同行しているような気分で読み進められる。(松﨑)

『パリ モダニティの首都 新装版』

デヴィッド・ハーヴェイ=著

青土社|4800円+税

 (『美術手帖』2017年8月号「BOOK」より)