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楽しみながら、アートへの思索を深める。7月号新着ブックリスト

『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。2017年7月号では、現代アートやデザインへの理解を深める著作から、夢日記をまとめた画文集まで、楽しみながら芸術を学べる4冊を取り上げた。

文=中島水緒+松﨑未來

右から『破壊しに、と彼女たちは言う 柔らかに境界を横断する女性アーティストたち』『現代アート10講』『夢の悦楽』『デザインってなんだろ?』の表紙

『破壊しに、と彼女たちは言う 柔らかに境界を横断する女性アーティストたち』

 国際的に活躍するキュレーター・長谷川祐子が、これまでに執筆した現代の女性アーティストたちに関するテキストのアンソロジー。川久保玲や草間彌生、サラ・ジーやピピロッティ・リストなど。本書に取り上げられている数名は、彼女が日本に紹介した作家と言って過言でない。作家に寄り添い、美術作品が生まれる現場を見つめてきた著者の言葉は、個々のアーティストと作品の特徴や差異を的確に言い表し、彼女たちとその作品を美術史上にポジショニングしていく。(松﨑)

『破壊しに、と彼女たちは言う 柔らかに境界を横断する女性アーティストたち』

長谷川祐子=著

東京藝術大学出版会|2800円+税

『現代アート10講』

 初学者向けの現代美術教本は山ほどあるが、アーティストや動向を年代別に追うだけでは作品の真の理解につながらない。その点、思索を深めることを目的とした本書は、人の論者が主要な表現形式について踏み込んで語っており、信頼度の高い内容に仕上がっている。消費社会を背景としたポップ・アートの台頭、メディウムの概念から読み解くミニマリズム以後の芸術をはじめ、フェミニズム、写真、建築、ポスト3.11の美術までを紙上講義。(中島)

『現代アート10講』

田中正之=編・著

武蔵野美術大学出版局|2400円+税

『夢の悦楽』

 田名網敬一が40年以上にわたり記録してきた夢日記が、一冊の画文集にまとめられた。田名網の「編集」的発想とサイケデリックな作風の源泉に触れることができるだろう。夢と現実の境界が限りなく曖昧な記憶や、幼少時の体験に起因するであろう生々しく鮮烈な夢、ダリや北斎の作品からのインスピレーションについて綴ったエッセイは、人間の脳の未知なる領域への好奇心を掻き立てる。他人の夢の世界を覗き見ることの愉悦に、存分に浸っていただきたい。(松﨑)

『夢の悦楽』

田名網敬一=著

東京キララ社|4800円+税

『デザインってなんだろ?』

 デザイナー歴40年近くのベテランが、デザインの成立・発展にまつわる古今東西のトピックを狩猟。「色」「装飾」「ロゴ」「レイアウト」という4つの分類から、デザインを織り成す基礎事項を確認する。後半では、印刷術、写真、DTPからネットまで、テクノロジーの進化も視野に入れながらデザイン思考を応用的に展開。易しい語り口で読みやすく、豆知識も多く得られる。本の束部分にあっと驚く仕掛けを施すなど、装丁も楽しい。(中島)

『デザインってなんだろ?』

松田行正=著

紀伊國屋書店|1800円+税

『美術手帖』2017年7月号「BOOK」より)

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