東京・原宿の太田記念美術館で、江戸時代の食文化の魅力を紹介する展覧会「江戸メシ」が2025年1月5日よりスタート。開幕に先駆けて、会場の様子をレポートする。担当学芸員は日野原健司(同館主席学芸員)。
日本において江戸時代は食文化が大きく発展した時代だ。寿司やそば、天ぷらといった料理がファストフードとして人気を博し、味噌や酢、醤油といった調味料も広く流通するようになった。そして、街の人々は自宅での食事に加えて、料亭や屋台での外食も楽しんでいたという。
同展では、葛飾北斎や歌川国芳といった人気浮世絵師らによって描かれた庶民の暮らしから、「食」をテーマとした作品91点を展示。「料理」「調味料・素材」「場所」といった3つのセクションからその様相を紹介している。
1つ目のセクション「さまざまな料理」には、そば、寿司、鰻、天ぷらなど、現代でも人気の料理を食べる江戸の人々が描かれた作品がずらりと並ぶ。例えば、四代歌川国政による《志ん板猫のそばや》は、擬人化されたネコたちが蕎麦屋で食事をしている風景が描かれている。ユニークかつ可愛らしくあるとともに、当時の人々がどのような食事をしていたのかが垣間見えるものとなっている。
料理を一通り楽しんだ後は、スイーツも食べたくなる。歌川国貞(三代豊国)が描いた《誂織当世島 金花糖》には、現代では少し珍しい「金花糖」という砂糖菓子が描かれている。金魚のかたちに固められた金花糖は彩り豊かで可愛らしく、当時の人々にも愛されたという。
浮世絵とは少し異なるが、北斎によって絵柄が刷られたお菓子袋も紹介されている。当時の浮世絵師たちがお菓子のパッケージデザインも手掛けていたというのは驚きだ。
また、年末年始にあわせた季節の料理が描かれた作品も並ぶ。いまはなかなか目にする機会も減ったが、臼と杵でつくられたつきたての餅はさぞかし美味しいにちがいない。国貞による《十二月之内 師走 餅つき》からは、その共同作業の様子も描かれている。