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加藤翼展から「佐賀町エキジビット・スペース」展まで、11月のレビューをプレイバック

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、11月に公開された全11本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

「加藤翼 Superstring Secrets」展(無人島プロダクション)の展示風景より 撮影=森田兼次

小金沢智評「イラストレーションがあれば、」(武蔵野美術大学 美術館・図書館)

「2章 イラストレーターを考える」より「2-3.東京イラストレーターズ・クラブ結成——情念によるイメージ」展示風景

 社会と密接につながり、時代の精神や思想を映し出す「イラストレーション」。中世の彩飾写本や16世紀の世界地図、現代のポスターまでが一堂に会した「イラストレーションがあれば、」は、イラストレーションを多角的に考察した展覧会であった。「イラスト」という略語が社会に浸透した日本において、イラストレーションの原理とは何か? その豊かさをキュレーターの小金沢智が論じる。
 

布施琳太郎評「芸術競技」+竹内公太「Body is not Antibody」展

SNOW Contemporary(東京)での竹内公太個展「Body is not Antibody」より、左が《文書2: エイリアン》(2020) Photo by Keizo Kioku Courtesy of SNOW Contemporary

 今夏開催された、「芸術競技」「Body is not Antibody」というふたつの展覧会の共通項として「作業員の死」を見出した美術家の布施琳太郎。林道郎による、ボードリヤール『象徴交換と死』を論じた書物から、「アナグラム」「供養」といったキーワードを抽出し、それぞれの作品について、原発や東京オリンピックの背後に浮き上がる「死」の存在を結びつけながら論じる。
 

清水穣評 桑原正彦「heavenly peach」展(小山登美夫ギャラリー)

 展示風景より Photo by Kenji Takahashi (C) Masahiko Kuwahara Courtesy of Tomio Koyama Gallery

 1990年代後半から一貫して人間の欲望による環境の変化に着目し、動物やおもちゃ、風景、少女などをモチーフとする絵画作品を制作してきた桑原正彦。小山登美夫ギャラリーでは1997年以来12回目となる個展「heavenly peach」を、清水穣がレビューする。
 

椹木野衣評 ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」

「ヨコハマトリエンナーレ2020」の展示風景より、チェン・ズ(陳哲)《パラドックスの窓》(2020)
(C) Chen Zhe 撮影=大塚敬太 提供=横浜トリエンナーレ組織委員会

 ラクス・メディア・コレクティブをアーティスティック・ディレクターに迎え、コロナ禍における国際芸術祭としてはいち早く開催されたヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」。前例のない状況のなか、ひとつのテーマではなく複数のソースを重視し、トリエンナーレを長い時間のなかでとらえる試みについて椹木野衣がレビューする。
 

飯岡陸評 斎藤玲児個展「24」+「新・今日の作家展2020 再生の空間」

地主麻衣子《Lip Wrap / Air Hug / Energy Exchange》(2020)の展示風景
撮影=加藤健 写真提供=横浜市民ギャラリー

 今年3月にオープンした新スペース「LAVENDER OPENER CHAIR」にて開催された斎藤玲児個展「24」と、横浜市民ギャラリーにて開催された地主麻衣子と山口啓介の2人展「新・今日の作家展2020 再生の空間」。コロナ禍に制作され、発表されたそれぞれの作品について、医療人類学者アネモリー・モルによる著書『ケアのロジック』を手がかりに、キュレーターの飯岡陸がレビューする。
 

中島水緖評 鹿野震一郎「logs」(Satoko Oe Contemporary)

《月光》(スタジオ、左)と《palace》(右)の展示風景
Photo by Kenji Aoki (C) the artist Courtesy of Satoko Oe Contemporary

 サイコロ、トランプ、フィギュア、髑髏、月、そしてピラミッド。同じモチーフを繰り返し描き、イメージの次元やスケールを自在に変換しながら遊びの輪を広げていく鹿野震一郎。Satoko Oe Contemporaryにて「logs」と題した個展を開催した作家の時系列を揺さぶる絵画について、美術批評家の中島水緒がレビューする。
 

小田原のどか評「加藤翼 Superstring Secrets」展(無人島プロダクション)

展示風景より 撮影=森田兼次

 「国家安全法」の可決直前の香港や東京オリンピック・パラリンピック会場近くを舞台に個人の「秘密」を集め、それを作品化する「Superstring Secrets」プロジェクトを手がけた加藤翼。このプロジェクトを大がかりなインスタレーションによって見せた無人島プロダクションでの個展「Superstring Secrets」を、小田原のどかがレビューする。
 

小林正人評 松下まり子「居住不可能として追放された土地」展(KEN NAKAHASHI)

松下まり子 Parissa 2020 キャンバスに油彩  (C) Mariko Matsushita

 絵画を中心に多様なメディアを用いながら、生や性のありようを表現してきた松下まり子。本展で発表した2019年後半から描き始めたという新作絵画には、ポーランドのアウシュヴィッツ博物館を訪れた経験や、コロナ禍における変化が大きな影響を与えているという。松下が2016年「第2回CAFAA賞」最優秀賞を受賞した際に審査員を勤めた画家の小林正人は、本展をどう見たか。
 

鈴木萌夏評「佐賀町エキジビット・スペース 1983-2000 現代美術の定点観測」(群馬県立近代美術館)

展示風景より、中央は森村泰昌の作品群 Courtesy of Hiroshi Yoshino Architects

 群馬県立近代美術館で「佐賀町エキジビット・スペース 1983-2000 現代美術の定点観測」展が開催されている。本展は、小池一子が主宰したオルタナティブ・スペースの先駆け「佐賀町エキジビット・スペース」を、会場風景や実際の出展作品から振り返るもの。あるスペースを歴史化することの意義と問題を、研究プロジェクト「レントゲン藝術研究所の研究」などを行う鈴木萌夏が論じる。
 

松井茂評「都市のみる夢」(東京都美術館)

「都市のみる夢」展示風景より、中島りか《空白2020》(2020) (c)ToLoLostudio

 東京都美術館で開催された「都市のみる夢」は、アーティスト・コレクティブ「tmyc」による企画だ。都市に暮らす人々を「都市のみる夢」の住民ととらえ、中島りかとミズタニタマミがインスタレーション群「夢の蒐集」を披露した。詩人で情報科学芸術大学院大学(IAMAS)准教授の松井茂が、同展のカウンター・エキシビジョンとしての性格をレビューする。
 

中山佐代評 福留麻里『西の湖ほとりに教わるツアー』

パフォーマンスの様子

 「ボーダレス・エリア近江八幡芸術祭 ちかくのまち」のプログラムのひとつとして行われた、ダンサー・振付家の福留麻里による『西の湖ほとりに教わるツアー』。福祉施設で暮らし、幼少から毎日ヒモを振り続けてきた武友義樹とのコラボレーションから生まれ、西の湖の自然のなかで行われたツアーパフォーマンスを、舞台の企画・制作・記録を行う中山佐代がレビューする。

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