東京・六本木の森美術館でカルティエ現代美術財団との共催により開催している「ロン・ミュエク」展(〜9月23日)。来場者数20万人を突破するなど、盛況を収めている本展で「美術手帖プレミアム」会員限定の解説付き特別鑑賞会が行われた。
ミュエクによる個展は2008年に金沢21世紀美術館で回顧展が開催されて以来、18年ぶり、2度目となっている。本展は日本初公開の6点を含む、初期の代表作から近作まで11点が展示され、作品の発展の軌跡を辿ることができる内容だ。
今回の特別鑑賞会は森美術館と美術手帖により実現したもの。本展のプロジェクト・マネージャーである同館・田篭美保が展示作品の解説を行い、約30名が特別なひとときを楽しんだ。

展示冒頭の《枝を持つ女》(2009)を抜け、《イン・ベッド》(2005)へ。田篭はありふれた人を大きくつくる観点や作品の女性と目が合わないことによって遠慮なく細部に注目することできる点を指摘した。また人肌を合成樹脂でリアリスティックに再現しているものの、シーツは本物を使っていると、ミュエク独自の素材の取り扱い方を解説。《ゴースト》(1998/2014)の展示室でも、田篭は大きな足や内省的な表情などの細部について時間を掛けて解説し、鑑賞者は耳を傾けながら思い思いに作品に目を凝らしていた。

東京の夜景を見渡す大きな窓のある展示室では初期作品《エンジェル》(1997)が配置されている。田篭は、長らく個人蔵であったため、今回が数十年振りの公開であること、また一般的な天使のイメージとは異なる、物憂げな中年男性の天使が制作された背景について述べ、鑑賞者は解説に頷きながら作品の表情を丁寧に観察していた。

日本初公開の《チキン/ マン》(2019)の展示室では、田篭は制作の経緯を紹介。2011年に地震によって甚大な被害を受けたニュージーランドのクライストチャーチから、復興記念のための依頼を受けて制作したという本作は、いまでも現地で大切にされている作品だそうだ。また、田篭は老人の表情や鳥の体勢をよく見て観察することで、様々な隠されたストーリーが浮かび上がると解説し、鑑賞者の細かな観察を促した。

本展のメインビジュアルにも起用されている《マス》(2016〜17)の解説では、頭骸骨ひとつひとつのふさわしい配置を展示する美術館ごとに検討するミュエクのこだわりが紹介された。開口部が限られた長方形の展示室に合わせて、鑑賞者が回遊することができるように配置された今回の展示は、カタコンベ(地下に作られた共同墓地)のように頭蓋骨を積み上げたソウルでの展示とは異なるそうだ。また、地震対策のために行われている安全措置の話も披露された。
全ての作品の解説が終わった後には田篭が質問を受ける時間も設けられた。「《マス》を触るとどのような感触なのか」や「1作品に掛ける制作時間は?」、「ミュエクはどのような性格なのか?」など、多くの質問が投げかけられ、田篭は実際に搬入を行なった際の経験やミュエクへの知識から丁寧に答えや考察を提示していた。
鑑賞会後に行われたアンケートには、「解説が素晴らしく、とても良かったです」「裏話を聞くことができ、作家や作品への理解が深まりました」「ゆったりとした展示なのでストレスなくまわることができ、時間も丁度よく心地よかった」との感想が集まった。
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