EXHIBITIONS

筒井伸輔展

筒井伸輔 2019、紙、ロウ、オイルパステル、50.8×33cm 撮影=宮島径 © TSUTSUI Shinsuke Courtesy Mizuma Art Gallery

筒井伸輔 2019、キャンバス、ロウ、オイルパステル、25×25cm 撮影=宮島径 © TSUTSUI Shinsuke Courtesy Mizuma Art Gallery

筒井伸輔 2017、キャンバス、ロウ、オイルパステル、25×25cm  撮影=宮島径 © TSUTSUI Shinsuke Courtesy Mizuma Art Gallery

 今年2月に逝去した画家・筒井伸輔の個展が開催。本展は、インドネシア滞在中に制作された作品に加え、未発表の近作、本展に向けて取り組んだ新作で構成される。

 筒井は1968年東京都生まれ、92年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。一貫してロウを使い、身近で採集した虫をモチーフとした絵画を制作。プロジェクターを使って型紙をつくるなど、作品から作家自身の意図的な操作をなくすことをひとつの試みとし、同じモチーフと画材を用いながらも、多様な表現を追求し続けた。

 2017年夏、筒井が初めての海外での滞在制作の地に選んだのはインドネシアのジョグジャカルタ。現地の人々との文化的交流だけではなく、自身の制作において大きな出会いがあったという。

 インドネシアのバティック(ろうけつ染め)と自身の作品には、技法やイメージに類似点が多いことに気づいた筒井は、バティックで使用されるチャンティンという器具に注目。それまで、モチーフが描かれた型紙をパズル状に切り分けてキャンバスに配置し、紙を一片ずつ外してロウを流し込んで画面を構成していた作品に、細い口金のついたチャンティンを使用することで、型紙を使用する従来の工程ではなく、キャンバスの上に直接ロウで線を引く手法を取り入れた。

 それまで色面で構成していた絵画を、線で構成することが可能となり、一層平面を意識するようになった筒井。本展で展示される新作ドローイングでは、重力に従って地面に落ちてきたようにも見える虫の死骸が、大きく余白を残した紙の下端に配置され、絵画の構成や平面性への作家の探究心を感じることができる。

 いっぽう、「在るもの」をそのまま作品にするために、ニュートラルな構図や色をあえて選択してきた筒井が、「主観やその痕跡を完全に取り払うことは無理だ」という考えに至った近年の作品からは、具象化した図像や大胆な色使いを見て取ることができる。
  
 筒井は最後まで気力を振り絞り、大事な時間を制作にあてて本展に臨んだ。展示のレイアウトや作品の額装など、可能な限り本人の意向に添った内容で本展を開催する。