第4章「真言宗各派の彫刻と秘仏」
最終章では、本展最大の見どころとなる仏教彫刻と秘仏が展開される。とくに秘仏の数は前後期で11件におよぶ。


京都・仁和寺が所蔵する国宝《薬師如来坐像》(1103)は平安時代後期を代表する仏師・円勢と長円親子によって再興された像。高さわずか25センチというサイズながら、そこに彫り出された端正な姿や、光背や台座に浮き彫りされた仏像など、高い技術力が見てとれる。

さらに、三重・観菩提寺の重要文化財《十一面観音菩薩立像》(9〜10世紀)は、33年に一度しか開帳されない秘仏だ。十一面六臂という特異な姿と鋭い眼差しは、秘仏ならではの神秘性を強く印象づける。

《如意輪観音菩薩坐像》(11世紀)は大阪・大門寺の秘仏。岩座上に坐す六臂の如意輪観音菩薩は珍しい彫刻作例だという。頭頂から台座までが一木造でつくられており、別材の板光背には筆で文様が描かれている。

会場の最後を飾る京都・安祥寺所蔵の国宝《五智如来坐像》(9世紀)は、現存最古の五智如来像として知られる本展を象徴する作品のひとつ。大日如来が備える五種の智慧(法界体性智・大円鏡智・平等性智・妙観察智・成所作智)を象徴するものであり、大日如来を中心に四如来(阿閦・宝生・阿弥陀・不空成就如来)を配することで曼荼羅を立体的に表現している。創建期の安祥寺に由来する初期密教彫刻の最高傑作であり、その静謐な存在感は圧倒的だ。

国宝・重要文化財がこれほどまとまって公開される機会は極めて稀であり、とりわけ秘仏や「後七日御修法」に関わる寺宝や秘仏を一度に鑑賞できる点は、本展ならではの醍醐味だろう。宗教史、美術史、文化史が交差する密教文化の奥深さを体感できる、空海生誕1250年の節目にふさわしい大規模展となっている。



















