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「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」(ヒカリエホール)開幕レポート。歴史の表舞台から見落とされてきた多様な写真表現に光を当てる【3/3ページ】

「日常」をめぐる冒険──見過ごされてきた風景の中で

 最終章となる「『日常』をめぐる冒険──見過ごされてきた風景の中で」では、潮田登久子、川内倫子、楢橋朝子、野口里佳、原美樹子、ヒロミックスらを紹介している。目まぐるしい日々を生きる現代人にとって「冒険」はやや遠い言葉に思えるかもしれない。しかし、日常にじっと目を凝らし、そこに新たな意味を見出すことも写真の持ち味と言える。

潮田登久子による「冷蔵庫」シリーズ

 潮田登久子(1940~)の「冷蔵庫」シリーズには、決して整理されているわけではない、生々しい生活の痕跡が見て取れる。そこには住人の暮らしの息づかいや密やかなルールがにじみ出ており、他人の家庭でありながらどこか懐かしさを覚える作品だ。

川内倫子による映像作品《illuminance》(2001~26)

 また、川内倫子(1972~)は今回《illuminance》(2001~26)という映像作品を出品している。ふたつのスクリーンに映し出されるのは、一見無関係でありながらもどこか関連性のあるイメージだ。川内作品ならではの柔らかく透明感のある光に包まれていると、まるで自分の感覚までその場所へトリップしていくような、不思議な心地よさと好奇心に満たされる。

山沢栄子を起点とする日本女性写真家の100年年表
1940年3月号『フォトタイムス』「カメラに生きる女性」より、山沢栄子の写真

 「日本女性写真家」というタイトルを目にして、「わざわざ『女性』と枠にはめる必要があるのか」と一瞬引っかかりを覚える人もいるかもしれない。しかし本展が提示しているのは、決して画一的な「女性ならではの繊細な表現」といったステレオタイプではない。

 本展が伝えるのは、「女性」というラベルによって歴史の表舞台から見落とされかけてきた、表現の豊かさそのものだ。そして「女性写真家」という言葉をあえて掲げなければならない現状は、社会が未だ発展途上にあり、過渡期にあることの表れでもあるのだろう。写真家たちの冒険に満ちたまなざしは、我々の現在地をも示唆しているようだ。