パリからバルセロナへ。カフェがつないだ芸術家たち
第3章では、パリとバルセロナを結ぶ芸術家ネットワークに光を当てる。中心となるのは、1881年にロドルフ・サリスが開いたキャバレー「シャ・ノワール(黒猫)」だ。詩の朗読や音楽、美術展示に加え、アンリ・リヴィエールによる影絵芝居が人気を博し、ピエール・ボナールやフェリックス・ヴァロットンらナビ派の画家たちにも影響を与えた。テオフィル・アレクサンドル・スタンランによる有名な《シャ・ノワール巡業公演》(1896)のポスターも展示される。
本展の大きな見どころのひとつが、スペイン・ムンサラット美術館から来日したラモン・カザス《マドレーヌ》(1892)とサンティアゴ・ルシニョル《カフェ・デ・ザンコエラン》(1889-90)だ。日本初公開となる《カフェ・デ・ザンコエラン》は、19世紀末のバルセロナで展開した芸術運動「ムダルニズマ」を代表する作品であり、パリのカフェ文化がスペインへと伝播していく様子を示している。

そして、このバルセロナの芸術家たちが集ったカフェ「クアトラ・ガッツ」に若きピカソも通っていた。1900年、同店で初個展を開いたピカソは、その後パリへ渡り、ロートレックらから強い影響を受ける。本展では《カンカン》(1900)と《酒場の二人の女》(1902)を並置し、華やかなカフェ文化との出会いが、やがて「青の時代」へと向かう転機になったことを示している。
印象派誕生の舞台となったカフェ・ゲルボワから、モンマルトルのキャバレー、そしてバルセロナのクアトラ・ガッツへ。本展は、芸術家たちが作品を制作した「結果」だけでなく、その背後にあった交流や議論、出会いの場としてのカフェ文化に焦点を当てる。教科書では語られにくい近代美術のネットワークをたどりながら、印象派からピカソへと連なる創造の系譜を再発見する機会となりそうだ。




















