ポスターが彩った夜のモンマルトル
第2章「夜のカフェ――シェレ、ロートレックの世紀末」では、ポスター芸術の黄金期に焦点を当てる。19世紀末のパリでは、「ムーラン・ルージュ」や「シャ・ノワール」といったキャバレーやミュージックホールが夜の街を彩った。ジュール・シェレやロートレックによるポスターは、たんなる広告媒体を超え、近代都市の視覚文化を象徴する存在となった。

とりわけロートレックは、自らもモンマルトルの歓楽街に深く身を置きながら、その世界を描き続けた画家だ。《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》(1891)や《ディヴァン・ジャポネ》(1893)では、踊り子や歌手だけでなく、観客のシルエットや舞台照明までもが画面の重要な要素として扱われる。岩瀬は、「ロートレックはカフェ文化そのものに没入していたからこそ、独自の表現を生み出すことができた」と語る。

いっぽうで、同じくモンマルトルに暮らしたゴッホは、歓楽街の熱気そのものではなく、その周辺に広がる風景に目を向けた。本展に出品される《モンマルトルの風車》(1886)は、近代化によって本来の役割を失いつつあった風車を描いた作品であり、都市の変化を静かに見つめる画家のまなざしを伝えている。




















