「波板と珊瑚礁 - 建築を遠くに投げる八の実践」(WHAT MUSEUM)開幕レポート。模型を通じて建築家たちの思考の「断片」を垣間見る【3/3ページ】

建築的思考を生かした、大胆な発想も

 個人の好奇心から出発したユニークな作品も目を引く。空港のターミナルから飛行機に搭乗する際に渡る「搭乗橋」。小さな建築とも、単一の機能を持つプロダクトともいえるこの構造体が気になった経験はないだろうか。DOMINO ARCHITECTSの大野友資は、単一目的のために特化したこの特異な構造体への興味から、搭乗橋が4つ連結した「PULP FICTION (jetway)」を制作した。本来の役割を離れ、どこにもつながることができない架空の浮遊空間は、見知った構造が想像のなかで新たな体験を生み出す装置となる高揚感を生み出していた。

DOMINO ARCHITECTS「PULP FICTION (jetway)」(2026)。模型はすべて手作業で、長い時間をかけて制作された Photo by Keizo KIOKU
DOMINO ARCHITECTS「PULP FICTION (jetway)」(2026) 撮影=編集部

 建築研究者の平野利樹は、生成AIを用いた「東京箱庭計画 - A Hakoniwa Plan for Tokyo」を提示した。東京湾のゴミ埋立地に位置する「海の森公園」の敷地に、新たな都市計画を提案するものだ。

 特徴的なのは、この計画に「箱庭療法」の手法を取り入れている点にある。設計において必要な条件を一度すべて取り払い、極めてパーソナルな領域から建築都市を立ち上げる試みとなっている。

平野利樹「東京箱庭計画」(2026)。箱庭療法によってつくられたイメージを用いて3次元モデルを生成。それをさらに生成AIに読み込ませて建築的な意図を付加していくことで、パーソナルな都市空間の提案を行っている Photo by Keizo KIOKU
平野利樹「東京箱庭計画」(2026) Photo by Keizo KIOKU

 本展で提示されているのは、建築として結実する手前の「思考」や「リサーチ」、あるいは「個人の関心」だ。これらが将来、実際の建築にどう生かされていくのか。そのプロセスを想像しながら会場を巡るのも面白い。

 私たちが普段何気なく利用している建築が、いかに多層的な思考の上に成り立っているのか。本展は、世界を異なる視点、または異なる時間軸で見つめるための新たなきっかけを与えてくれるだろう。

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