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「浦川大志個展 スプリット・アイランド」(福岡市美術館)会場レポート。福岡の美術史を引き継ぐ「風景」が生まれるまで【2/4ページ】

九州派との出会い、グラデーションの出現

 展覧会はプロローグと全5章で構成。プロローグでは、浦川が高校時代に九州派をはじめとした地元福岡のアーティストと出会い、そこから絵画制作に取り組むようになった道程が紹介されている。

 浦川の人生を変えるきっかけとなったのが、2011年に開催された本館と長崎県立美術館の共同企画展「菊畑茂久馬後/絵画」展だったという。浦川はここで出会った菊畑茂久馬の絵画、とくに「天動説」シリーズの存在感に衝撃を受けて美術にのめり込むようになる。宗像から福岡まで毎週のように自転車で通い、福岡市内のギャラリーに顔を出すようになった浦川は、九州派の作家と交流を始める。さらに若手作家を支援するために1978年に立ち上げられた「IAF芸術研究室」を母体とするギャラリー併設のカフェ「IAF SHOP*」にも出入りし、出展作家と交流していった。なかでもIAF SHOP*に出入りしていた江上計太は、浦川の絵画の師ともいえる存在だったという。

左が江上計太《ホワイトヘブン》(2000年代)と菊畑茂久馬《天動説》(1983)。両者ともに浦川に大きく影響を与えたアーティスト。いずれも浦川が所蔵するコレクションから

 第1章「予兆から風景へ」では、浦川の作品の特徴である「グラデーション」がどのように発生したのかを辿る。九州産業大学の美術学科に入学した浦川は、美術の話ができる同志が少ないことに希望を持てず、東京など福岡以外の展覧会に活路を求めるようになる。さらに浦川はこの抽象をより「風景」として表現するようになっていく。

左から《机上の憂鬱》(2015)、《予兆》(2014)。まだグラデーションを前面に押し出していない時期の作品
左から《Carnival》《親子》(ともに2015)。具象的なモチーフに明確なグラデーションが生まれている

 第2章「風景と幽霊と画像」は、浦川の「風景」への造詣が深まっていく過程を紹介する。大学卒業後の浦川は、ウェブ・ディレクターの職を得ながら、寝る間を惜しんで絵画制作を続けていく。この時期、浦川はインターネットやデジタルデバイス上の画像に「風景」を見出すようになる。バックライトで照らされた液晶のドットのような、輪郭の曖昧なイメージを連続させていく。実在せずとも「風景」として眼差されることで、たとえ液晶上のイメージでも「風景」になる。そんな根源的な問いかけがここに発生している。

左から《風景と幽霊》(2017)、《風景、その後》(2018)。タイトルに明確に「風景」が現れることからもわかるように、デジタル上の風景を強く志向するようになった時期の作品

 第3章「複数の断片たち」では、密度が高まり、モチーフの複雑な重なりを見せるようになった2020年前後の浦川の作品を展示。2枚の絵画を1対にし、そこに表した反復に左右で差異を発生される「LandScape」シリーズはその典型といえるだろう。そこにある差異は「風景」に時間の経過のイメージを与えているように感じられる。

左から《Landscape #1》《Landscape #2》《Landscape #3》《Landscape #4》。対になった2枚の絵画に差異が発生していることで、時間性が見出だせる

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