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「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」(森美術館)開幕レポート。多層化する時間に宿る永遠を問う【2/5ページ】

様々な時間のスケール

 最初の展示室では、「様々な時間のスケール」をキーワードに、アーティストたちが扱うメディアや技法の「内部に潜む時間」を通し、ひとりの人生の時間が、社会・身体・歴史といった異なるスケールの時間へと接続されていく様が示される。

 ケリー・アカシは、ガラス、鉄、石といった古来より表現に用いられてきた素材に蓄積した記憶や知識を受け止めながら、それらを新たな造形へと昇華している。素材そのものが持つ「時間」を取り込むことで、個人の経験と普遍的な歴史が交差する視点が提示される。

展示風景より、手前はケリー・アカシ《星々の響き》(2025)

 沖潤子は、布に残された家族や他者の記憶を刺繍によって重層化し、過去と現在、個人と社会を結び直す。抽象画のような濃密な表情が現れ、手仕事に潜む時間の厚みを強く感じさせる。

展示風景より、壁面は沖潤子の作品群

 陶芸の伝統技法「梅花皮」や「石爆」を大胆に再解釈し、陶芸表現の新たな可能性を切り拓く桑田卓郎。本展では器を離れた大型の抽象オブジェが中心となり、技法に内包される時間の堆積が現代の造形へと変換されている。

展示風景より、手前は桑田卓郎の作品群。奥の壁面は庄司朝美の絵画

 庄司朝美は身体のイメージや感覚を再獲得することを目指し、幻想的な「身体の物語」を描く。いっぽうで廣直高は、身体の動きを制限した状態で制作を行うことで、身体の不確かさと創造行為の関係を可視化している。両者は身体という根源的な媒体を通じて、「生の時間」に向き合っている。

展示風景より、廣直高の作品

 女性2人組のユニット、ズガ・コーサク+クリ・エイトは、段ボールやパッケージを用いて六本木駅の出入口を再現。現地で拾われたゴミを取り入れるなど、日常風景が時間の層とともに立ち上がり、恒久性を前提としない制作プロセスが都市の儚さを鋭く示す。

展示風景より、ズガ・コーサク+クリ・エイト《地下鉄出口 1a》(2025)

編集部