彫刻部門に選ばれたマリーナ・アブラモヴィッチは1946年セルビア(旧ユーゴスラビア)生まれ。自らの身体を使うことを主な表現手法としており、時に観客も作品の一部となるような「パフォーマンス・アート」の先駆者でもある。その功績からも、個人的には遅すぎる受賞だとも感じられるほどだ。

At his studio in London, April 2025
© The Japan Art Association / The Sankei Shimbun
実験対象として観客に自らの身体を委ねた《リズム0》や《リズム5》(ともに1974)では、何度も命を落としかけながらも、身体と精神の限界に挑むような自己表現を行い、世界中の観客を魅了してきた。とくに有名な《The Great Wall Walk(万里の長城を歩く)》(1988)では、当時公私のパートナーであったアーティストのウーライと中国の万里の長城を両端から90日間かけて歩き、約2500キロかかる中間地点で再会し別れを告げた。
「パフォーマンスのリハーサルは一切しません。常に観客の前で初めて試します。なぜなら、私は観客無しでは何もできないからです」と語るアブラモヴィッチにとって、観客はただの傍観者ではなく、「創造の共同制作者」と言える存在なのだ。

Marina Abramović, Rhythm 5, 1974
Performance 90 Minutes
Student Cultural Center, Belgrade
Photo: Nebojsa Cankovic
Courtesy of the Marina Abramović Archives

ニューヨーク近代美術館(MoMA)
Marina Abramović, The Artist Is Present, 2010
Performance 3 months
The Museum of Modern Art, New York, NY
Photo: Marco Anelli
Courtesy of the Marina Abramović Archives



















