
展覧会の冒頭には、1900年のパリ万博で黒田清輝らが持ち帰ったミュシャのポスター図版が展示され、日本の画家たちに衝撃を与えた「視覚の転換点」が象徴的に示されている。洋画家・藤島武二は、穏やかな写生からロマン主義的題材を経て、パリやローマへの留学を経て装飾的な独自の画風を確立。1901年からは文芸雑誌『明星』の表紙や挿絵を手がけ、ミュシャ風の様式で描かれたヴィーナス(=明星)は、与謝野晶子らの情熱的な詩と相まって、恋愛や憧れを歌う新時代の幕開けを象徴するものとなった。

また、図案家の杉浦非水は、パリ万博を契機にアール・ヌーヴォーに魅了され、三越呉服店の広告印刷物で名を馳せた。のちにウィーン分離派の様式も取り入れつつ、菊池幽芳の大衆小説『お夏文代』では、木版と銀箔押しを用いた豪華な装幀を手がけ、出版物を高度な美術品へと昇華させた。





















