こうしたクロノロジカルな展示とは別に、残る2つの展示室はそれぞれ異なる切り口で作品が紹介されている。
例えば高い天井から自然光が降り注ぐ展示室Cの「空間に描く」と題された章では、空間を生かした大型作品によるインスタレーションが展開。これまで国内外の様々なスペースで展示を行ってきた加藤だからこそ、見事なバランスで巨大空間をコントロールしている。

美術館の外観を覆う石州瓦(赤瓦)をイメージした、床や壁、天井が赤い展示室Aは「小さな歴史」と題されたバラエティ豊かな空間だ。そこに並ぶのは、アンテプリマやオニツカタイガー、千總をはじめとするファッションブランドとのコラボレーション、展覧会ごとにつくられてきた小さなソフビ、そしてバンド「HAKAIDERS」「THE TETRAPOTZ」の映像など。絵画にとどまらない、多種多様な加藤のクリエーションが紹介されている。




200点近くの作品・資料によって、加藤が一貫して取り組んでいる「ひとがた」の表現の変遷をたどることができるこの展覧会。何者かへの道というタイトルについて、加藤は「出口のないことを考えながら生きることは人間らしいことで、多分何かにつながっている」と話す。加藤の評価はすでに確立されていると言えるが、決してここが道の終着点ではなく、これから先もはるか遠くまで続いている。そう思わせる展示となった。
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