着物文化への危機意識
京友禅着物の老舗・千總(ちそう)と、現代美術家・加藤泉。両者が出会い、見事な作品が生み出された。

千總は1555年、京都・烏丸三条で創業。2025年に470周年を迎えた京友禅の老舗中の老舗だ。室町時代に法⾐装束商としてスタートした千總は「伝統とは、守ることでなく創ること」という代々の教えのもと、着物の新たな美しさや⽂化の提案を続けてきた。かつて明治時代には京都の絵師たちと協業し、進取の気性に富んだ京友禅のデザインを打ち出し、近年はモンブランやグローブトロッター、サントリーなど国内外でコラボレーションも積極的に展開。外部のクリエーションと出会うことで、時代に即した表現を続けてきた。
千總代表取締役社長・礒本延は、昨今の着物をめぐる状況に関して、「着物文化は苦しい立場に追いやられている。着物に対して目を向けていただく機会が非常に少ない」と語る。そうしたなか、伝統や技術、美意識を継承し、着物を再解釈するために選んだパートナーが、国際的に活躍するアーティスト・加藤泉だった。
