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「西條茜展 ダブル・タッチ」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)開幕レポート【2/2ページ】

 タイトルにある「ダブル・タッチ」とは発達心理学の用語。人は母体の中にいるとき、自らの手を重ねることで、自身が形ある存在だと認識するという。その際に働く「自分が触れている感覚」と「自分に触れられている感覚」を認識することがダブル・タッチ(二重感覚)だ。

 西條はこの言葉をタイトルに選んだ理由として、「自分がいまやっていることに当てはまる」と語る。この原初的な感覚を軸に、赤ん坊が水で清められるような《静寂に驚き目が覚める》から展示が始まり、人生の歩みのように作品が点在する。

展示風景より、中央が《静寂に驚き目が覚める》(2025
展示風景より

 西條の陶作品は、内臓や人体を想起させる形状を持つ。それらには複数の穴が設けられ、他者が内部に息を吹き込むことで、独特の音を発するパフォーマンス作品としても成立する。こうした作品は本展でも見られるが、さらに今回は、パフォーマンスに「運搬」という要素を加えるための作品群《The Melting Laborers》も発表された。

 パフォーマーが窪みや穴に身体を埋め、ゆっくり押すことで会場に「動き」を与えるこれらの作品。しかしそれは動いていないときでさえ、静かに身体を待っているかのように見える。

展示風景より、手前は《Waiting Man》(2025)
展示風景より、《The Melting Laborers #1-4》(すべて2025)

 今回はガラスの作品も初めて発表された。吹きガラスによって生み出された有機的な造形。手を使わず、自らの呼吸という行為によって形が決まるこれらの作品は、パフォーマンスに「息」を取り入れてきた西條にとって地続きでありながら、新たな表現のかたちであり、新たな可能性を持つものだ。

展示風景より

 なお、本展会期中の特定の日程では、パフォーマンスの実演も予定されている。ぜひその場で息や身体を介したコミュニケーションを体験し、「身体が交差する空間」を目撃してほしい。

展示風景より、《The Golems》(2025)

編集部

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