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「アレック・ソス 部屋についての部屋」展(東京都写真美術館)レポート。なぜ「部屋」なのか?【4/4ページ】

Room 5

 5番目の部屋は、本展が生まれるきっかけとなったシリーズ「I Know How Furiously Your Heart is Beating」が並ぶ。同作は、アメリカの詩人ウォレス・スティーヴンズ(1879〜1955)の詩「灰色の部屋(Gray Room)」の一節からタイトルがとられたもの。2019年に同名の写真集としてまとめられ、ソスのキャリアにおいて重要な転換点となった。外とつながる内部空間を写したこれらの作品は、ソス自身が「展覧会の心臓部」と語る本展のキーピースだ。

Room 5の展示風景より、左から「I Know How Furiously Your Heart is Beating」シリーズのうち《Anna, Kenfield, California》(2017)、《Ute's Books, Odessa》(2018)
Room 5の展示風景より、「I Know How Furiously Your Heart is Beating」シリーズのうち《Irineu's Library, Giurgiu, Romania》(2018)

Room 6

 最後の部屋に展示された世界初公開作品となる最新シリーズ「Advice for Young Artists」は白眉だ。このシリーズは、2022年から24年にかけて全米の美術学校を舞台に撮影されたもの。シリーズには人物も含まれているが、特筆すべきは教室やスタジオに置かれたオブジェクトだろう。デッサン用の石膏や様々な静物が組み合わさり構成された画面は、これまでのソスの作品にはない雰囲気を放つ。作品の中にはソス自身の姿も見て取れる。ソスは本作について、「学生になったときの気分を追体験したいと考えた。自分が歳をとったことを実感しており、なぜ写真家となったのか、なぜ写真を撮るのかという『初心』を忘れないようにという思いを込めたもの」と語っている。

Room 6の展示風景より、「Advice for Young Artists」のうち《Still Life Ⅷ》(2023)
Room 6の展示風景より、左から「Advice for Young Artists」のうち《Still Life Ⅱ》(2024)、《Katherine's Drawing》(2023)

 本展に際し来日したソスは、「夢が叶った。東京は写真の一大中心地であり、そこで展覧会ができたことは大きな喜びだ」としつつ、「私の作品は、様々なテーマにおいて『内部空間』が共通要素としており、最初から非常に重要なものとして貫かれている」と語った。ソスの表現において部屋が持つ意味を、本展を通じて考えたい。

編集部

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