最後となる第4章「果てしなき眷属の世界」では、名前を持たない眷属や、日本独自の眷属など、時代が下るとともにさらに拡がっていった眷属の世界を紹介。
本章では奈良・興善寺にある定英作《文殊五尊像》のうち、眷属の于闐王、善財童子、仏陀波利、大聖老人立像の4体(1463、寛永4年)を展示。獅子にのる文殊菩薩に付き従う御者、童子、僧、老人というこれらの眷属は、日本における信仰のなかで構築されていった。とくに腕を突き出した于闐王の姿はどこか愛嬌がある。
日本固有の神々にも、眷属が存在する。牛頭天王と稲荷神を祀る岡山・木山神社の奥宮本殿より近年見出された一対の白狐像《神狐像》(室町時代、14〜16世紀)は、左方は珠、右方は鍵をくわえている。いまも多くの神社で祀られているが、狐は稲荷神の使いとされ、稲荷社の前には獅子や狛犬ではなくこの狐の像が置かれた。
眷属の成立から仏教説話のなかでの扱い、そして日本独自の発展までを貴重な資料とともに包括的に追うことができる展覧会だ。仏教文化が育んできた魅力的な眷属たちを、ぜひ会場で見ていただきたい。