「浅間国際フォトフェスティバル2024 PHOTO MIYOTA」開幕レポート【2/2ページ】

 フェスティバルならでは屋内展示も楽しみたい。

 ベルリン在住のアーティスト・武村今日子が《Taste of Ostalgie》で撮影したのは素朴な食事だ。本作タイトルにある「Ostalgie」とは、旧東ドイツの生活や文化を懐かしむ言葉。本作で武村は食糧不足の旧東ドイツ時代に市民が知恵を振り絞り生み出した独自の料理を再現。庶民の知恵の記憶と言えるものを現代に甦らせた。

展示風景より、武村今日子《Taste of Ostalgie》

 バハラ・シッカの《The Sapper》は、インド陸軍で工兵だった作家の父を被写体にした作品。カースト制度が残るインドにおいて、中産階級に属する父を長期に渡り撮影することで、インドの発展とそれに伴う痛みを個人の姿に託した。

展示風景より、バハラ・シッカ《The Sapper》

 余宮飛翔の《amnesia》は、作家の幼少期の記憶をトリガーとして作成されたもの。複数のイメージを組み合わせて構築し、プリントアウトしたものにカットやレリーフを施し、またデータへと変換するという複雑な過程で成り立っている。

展示風景より、余宮飛翔《amnesia》

 高木康行が見せるのは、1993年から10年間にわたって撮りためたブルックリンの空地の記録だ。2001年のアメリカ同時多発テロを挟み、ジェントリフィケーションによって大きく変化したブルックリン。高木の写真は、かつての街の姿をいまに伝える。

展示風景より、高木康行《BLR: Brooklyn Lot Recordings》

 屋外ではこのほか、世界各地の新聞にマーブリングを施した吉楽洋平の《Formless》や、作者と語り手が同一人物となってフィクションを紡ぐエルザ&ジョアンナの《The Timeless Story of Moormerland》、野湯に人間の身体を介在させた写真を撮り続ける山谷佑介の《ONSEN》、横浪修がライフワークとして続けている、子供を被写体に、フルーツや野菜を身体のどこかに挟んで撮影するシリーズの延長《PRIMAL》、ニコンフォトコンテストの過去受賞作など、多様な写真表現が集まる。

 今年は涼やかな御代田で、写真の世界に浸ってみてはいかがだろうか。

展示風景より、吉楽洋平《Formless》
展示風景より、エルザ&ジョアンナ《The Timeless Story of Moormerland》
展示風景より、山谷佑介《ONSEN》
展示風景より、横浪修《PRIMAL》
展示風景より、ニコンフォトコンテストの過去受賞作

編集部

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