株式会社三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が推進するアート事業のひとつ「SMBC ART HQ」。その第2弾として、大林コレクションの33点とSMBCコレクションの3点を展示する「Portraits – Obayashi Collection」が東京・丸の内の三井住友銀行東館 アース・ガーデンで始まった。会期は10月20日まで。
SMBCグループは、SMBC信託銀行が日本橋支店にアート作品を見ることのできるスペース「アートブランチ」を2019年に展開させたほか、今年7月に開催された「Tokyo Gendai」ではプリンシパルパートナーを務めるなど、近年アート分野へ注力する姿勢を見せている。
そのような事業の一環でもある「SMBC ART HQ」は、SMBCグループの関連施設を活用し、良質なアート体験を創出することを目的に2022年から実施されているもの。第1弾はミスミグループ創業者・田口弘による「タグチ・アートコレクション」から18点を展示。第2弾となる本展では、株式会社大林組会長の大林剛郎による「大林コレクション」から、ポートレイトに焦点を当てた作品群が展示されている。
大林は本展の開催に次のように語った。「SMBCよりお誘いいただきこの企画が実現した。本展のテーマである『ポートレイト』は、太古の昔から描かれてきたものだが、現代ではコンセプチュアルな作品の表現手段として用いられている。大林コレクションの33点とSMBCコレクションの3点、自身の古美術もあわせて展示することで、人間がどのように表現されてきたかを歴史的に俯瞰できるような内容となっている」。
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イントロダクションには、大林のポートレイト数点と、ジョージェ・オズボルトによる《収集家と彼の見つけたもの》(2012)が展示。顔が的として描かれたコレクターとその収集品が描かれた本作は、現代のアート業界においてコレクターもその市場から狙われていることを風刺したものだ。
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イントロダクション以降は、ヨーロッパの宮廷文化に見られる人物画から1900年代の作品、そして現代作家による最新作までがおよそ時系列に沿って見ることができる。そのなかで、ポートレイトの意味合いが「誰を(何を)描いたか」から「どのように描いたか」にという価値観に移行していったことがわかるだろう。
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2000年代以降の作品では、現代作家の五木田智央や加藤泉といった特異な姿かつ匿名性の高い人物画が目を引いた。ほかにも、渡辺豪による3DCGで作成したモデルに人間の皮膚の画像データを貼り付けた《フェイス(ポートレイト)-24》(2008)や、「WHO IS WHO?」という問いが本展とも親和性の高いサイモン・フジワラの《フー?の本(紹介)》(2022)も見どころとなっている。
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SMBCのみならず、直近では三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)も日本の伝統工芸の支援へと名乗りを上げた。日本各地に広大なネットワークを持つ金融企業ならではの強みを生かした今後の展開にも注目したい。