2020.12.11

これまでにないオンラインアートフェア。「紀陽銀行presents UNKNOWN ASIA 2020 ONLINE」が開幕

2015年にスタートした国際アートフェア「UNKNOWN ASIA」が6回目の開催を迎えた。初のオンライン開催となった今回の特徴とは何か? プレビューの様子をお届けする。

UNKNOWN ASIA 2020のオンライン会場
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 2015年にスタートした国際アートフェア「UNKNOWN ASIA(以下、アンノウンアジア)」が今年、6回目の開催を迎えた。初のオンライン開催だ。

 アンノウンアジアは、若手アーティストを中心とした「UNKNOWN(未知の才能)」を発掘するためのプラットフォームであるアートフェア。アートフェアの定形であるギャラリーブースではなく、アーティストたちが直に作品をプレゼンテーションする形式が特徴だ。

昨年の会場風景

 昨年は約290組(うち海外59組)という過去最大規模での開催となったが、今年は新型コロナウイルスの影響によって、世界各地のアートフェア同様、オンライン開催へと踏み切った。

 今年はそれぞれのアートフェアにとってオンライン元年とも言える年であり、どのフェアも手探りでベストなオンラインフェアのかたちを探求している。そんななか、このUNKNOWN ASIA 2020 ONLINEのユニークさは突出したものだと言えるだろう。

 通常、オンラインフェアではブースの代わりに画像を並べて見せることが多いが、アンノウンアジアはそうではない。まず作家単位でページが用意され、そこでは作品画像とプライスを閲覧できる。これに加えて、画面の向こうに各アーティストが待機。「VIDEO CALL」ボタンを押せば、アーティストと直接話をすることが可能となっている(チャットでも気軽に質問できる)。

アーティストページ

 また、作品購入に至らずとも、100円から任意の額をドネーションできるシステムも実装。若手アーティストたちを気軽に支援することができるのは、これまでのアートフェアにはない仕組みだ。

 UNKNOWN ASIA実行委員会は、「オンラインですが、実際に人と触れ合えることが大事なんです。バーチャル空間でのフェアということも考えられますが、アーティストとコミュニケーションするということがアンノウンアジアの醍醐味」と語る。「アーティストもコロナで活動が制限されていますが、表現への欲求は止まっていません。そういう人たちにちゃんと発表の機会を提供したいと思ったのです」。

 では実際にどのようなアーティストが出品しているのか、その一例を見ていこう。

 二宮千都子はプログラミング言語を構成要素とした抽象画を描くアーティスト。アーティストであるとともに、システムエンジニアでもある。普段プログラミングをするなかで、その画面が抽象画のように見えることがあるという二宮。日常生活では表出しないプログラムを絵画にすることで、その存在に光を当てる。「常日頃、自分が見たことがない試みをしたいと思っています。今回のアンノウンアジアの新しいやり方にも共感します」。

二宮千都子 ruler_01

 薄く繊細なレースに見える作品。じつは生地に液状磁土を染み込ませて造形し、1200℃で約20時間もかけて焼成したものだ。西洋の伝統的な手法を用いる白井てりは、「女性の健康」と社会との関わりをテーマに作品を発表しており、現在も大阪大学大学院で「健康医療問題解決能力の涵養」を学んでいる。今回出品した作品は、「国立がん研究センターがん対策情報センター」2017年調査の乳がん罹患率11分の1に掛けたもので、11人の女性の乳房と下着にそれぞれのストーリーを設け、誰もが当事者になり得ることを表現している。アートを通じてヘルスリテラシーを向上させたいという願いが込められた作品群に注目だ。

白井てり Age45

 マレーシアから参加したイラストレーターのXiao Ming Tangは、小さい頃からアドベンチャーコミックに親しんできた。ポップな色彩で描かれるのは、日常生活における様々な「恐怖」だ。そこには新型コロナウイルスの感染拡大や、それを政治利用しようとする政治家たちなど、時事的な話題が盛り込まれている。時事問題へ強い興味関心を示すとともに、アートを通じて社会における精神疾患の理解に対しても取り組みたいと話す。

Xiao Ming Tang Politics 2020

 谷敷謙は、雛人形などで見られるテキスタイルを埋め込む伝統技法「木目込人形」を使い、現代の人々を表現する。木目込人形は本来、子供の身代わりの型を水で流し、災厄を祓う風習のなかで使われてきたが、時代が移るにつれて、それを飾ることで厄を祓うというかたちに変化していった。大学でテキスタイルを専攻した谷敷は、現代の古着を木目込むことで、そうした伝統をアップデート。「かつて親が願った子供の成長が成就している」ということを伝えるために現代の人々を表現する。

谷敷謙 Dynamite - BTS Art Cover

 今回のアーティストへの取材はすべて、アンノウンアジアのオンラインを通じて行った。アーティストたちと直接コミュニケーションできるという意味では、これまでのアートフェアに近い体験ができると言えるだろう。画面越しに実際の作品のディテールを見せてくれる作家もいた。実行委員の谷口はこう語る。

 「コロナだからオンラインにする、というだけではないんですよね。子育てしているアーティストや、巨大な作品を発表したいアーティストなど、これまでもじつはいろんな制限があった。来場者にとっても予約制などは堅苦しいじゃないですか。でもオンラインフェアならいつでもどこでも参加できる。それにアーティストはライブで来場者とつながることで、いろんなプレゼンテーションが可能になります」。

 印象深いのは「アーティストと直接話して物を買う、というプロセスは市場と同じです」という言葉だ。「ただのネット通販ではない、市場の活気ある売り買いみたいなことが、アートの世界でもできれば面白いですよね」。

 新しい試みに踏み切ったアンノウンアジアは、オンラインアートフェアの新しい可能性を拓いたかもしれない。

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