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注目のスペイン人アーティスト。ココ・カピタンの個展「NAÏVY」で見る自由、純真、無邪気

ファッションブランドとのコラボレーションで注目が高まっているスペイン人のアーティスト、ココ・カピタン。その日本初個展「NAÏVY: in fifty (definitive) photographs」が渋谷にあるPARCO MUSEUM TOKYOで開幕した。本展の見どころをアーティストの言葉とともに紹介する。

展示風景より

 グッチ、ディオール、A.P.C.、COSなどとのコラボレーションで注目を集めているスペイン人のアーティスト、ココ・カピタン(以下、ココ)。その日本初となる個展「NAÏVY: in fifty (definitive) photographs」が渋谷PARCO 4階にある「PARCO MUSEUM TOKYO」で始まった。

 ココは1992年スペイン・セビリア生まれ。11歳のとき、スペインの一番端っこでモロッコに面したカディスに移住した。海から近く、毎日自転車で海辺を通学していたというココは、その経験が「私と海との関係、そして海への執着に大きな影響を与えた」と話す。

展示風景より

 「美術手帖」の取材に対し、ココは幼少時代に集中的に取り組んだシンクロナイズドスイミング(アーティスティックスイミング)について語った。「プールで1日に何時間も泳いでいました。土曜日は、朝10時から夜10時までトレーニング。オリンピック選手のようにスポーツに身を捧げたのは、私にとって本当に大変なことでもありました。なぜなら、それは私に他の何かをする時間をあまり残してくれなかったから」。

 ほかの都市への引っ越しを機にシンクロナイズドスイミングをやめたココ。「水を新しい自由と交換したような気がしました。夏にはひとりで海に行って朝から泳ぐこともありますが、私にとって、海は開放感を与えてくれるものだと思います。水を楽しむことに変わりはなく、それほどプレッシャーを感じなくなりました」。

展示風景より

 そんなココにとって、「海」はその制作における重要なテーマのひとつだ。本展では、2020年にロンドンを皮切りに、昨年アムステルダムに巡回した個展「Naïvy(ナイーヴィー)」を踏襲し、先ごろ完結した同名シリーズの完全版となる50点の写真作品を、ココが自ら制作したファウンド・オブジェとともに初公開している。

展示風景より

 「Naïvy」は、純真や無垢を意味する「Naïve(ナイーブ)」と、海軍や濃紺色を表す「Navy(ネイビー)」を組み合わせたココによる造語。セーラーたちが住む、想像上の海の世界にささげることを象徴するものだ。

 「言葉で遊ぶのが好きで、それは私の作品の一部でもある」と語るココ。「『ネイビー』は紺色を思い浮かべますが、それは海に関係するもので、今回の作品のメインカラーでもある。『ナイーブ』は、ネイビーという言葉から連想されるシリアスな雰囲気を緩和し、ネイビーという集合体、ミリタリーのシリアスな概念を見直したいと考えました」。

展示風景より

 写真作品はすべて手作業で生み出されたCプリント。各写真の右下の額装には、「MY TABI BLUES」「BLUE DREAM WITHIN A DREAM」など詩のようなテキストが綴られている。写真のほか、絵画、オブジェ、インスタレーションなどの作品も発表しているココにとって、テキストは「作品のほとんどの始まり」だという。

展示風景より

 写真作品に加え、本展では海軍の水兵たちが実際に身につけていたセーラー服をもとに制作したファウンド・オブジェも展示。水兵の写真や帽子などをコレクションしているココは、「時々、船乗りの手書きの文字などのディテールを見つけることがある」という。自ら刺繍を施したセーラー服を通し、衣服に染み込まれた水兵たちの記憶や不在も会場に召喚されている。

展示風景より、ファウンド・オブジェの作品群

 本展を通して伝えたいメッセージについて尋ねると、「あまり具体的なメッセージのようなものは意図していません」との答えが返ってきた。「私の作品から何を感じるか、私の作品が何を伝えるのか。楽しんでもらえたら」。

本展のために来日したココ・カピタン

編集部

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