2021.10.14

渋谷PARCOでカルチャーフェスティバル「P.O.N.D.」が開催中。若手作家の才能が一堂に

渋谷PARCOで10月17日まで開催中のカルチャーイベント「P.O.N.D.」。「TRANSFER」をテーマにした、新進気鋭の作家たちの表現が集まるこのイベントのハイライトを、展示作品を中心にレポートする。

「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より
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 渋谷PARCOでカルチャーイベント「P.O.N.D.」が10月17日まで渋谷PARCOで開催中だ。「P.O.N.D.」は、前身となる「シブカル祭。」のフィロソフィー「あたらしい才能の発見と応援」を引き継いだ、PARCOのカルチャーイベント。「Parco Opens New Dimension」の頭文字をとったもので、「つねに新しい次元を切り開いていくイベントでありたい」という思いが込められている。

渋谷PARCOの正面玄関

 今年の「P.O.N.D.」は「TRANSFER=移ること、伝わること」をキーワードに、「退屈な日常ではなく非日常を感じたい」「見たことのない景色をこの眼で見たい」といった思いを表現した気鋭のクリエイターたちの作品が、地下1階の「GALLERY X」や4階の「PARCO MUSEUM TOKYO」をはじめ、建物の内外で展示されている。

「PARCO MUSEUM TOKYO」のエントランスと点子《In your sleep》
「GALLERY X」のエントランス

 1階の正面エントランスから入ってまず来場者が出会うのは、Akari Uragamiによる巨大な立体作品だ。織りと編みによるソフトスカルプチャーの新作の存在感を「P.O.N.D.」の入口ともいえる玄関で体感してほしい。

展示風景より、Akari Uragami《ANZEN》

 4階「PARCO MUSEUM TOKYO」では、「TRANSFER」をテーマに、彫刻家、写真家、ペインターなど、新進気鋭のクリエイター20組が作品を展示している。

「PARCO MUSEUM TOKYO」
「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、手前は三好彼流《冗談》

 会場エントランスには「現代における美容のあり方」をテーマに作品を制作する西咲知美が立体作品と写真作品を展示。メイク道具や医療器具をモチーフにした作品で、身体と美の関係性について問いかける。

「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、左から西咲知美《skin cell》、《transdermal》

 横手太紀は、コンクリート片や麻ひもで結わえたビニールなどで構成されるインスタレーションを制作。一見、解体現場の片隅にある廃材のようにも見えるが、それぞれが静かに上下し、揺れ動きながら音をたてることで空間に緊張感をもたらす。

「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、横手太紀《When the cat`s away , the mice will play》

 浦川大志は大型の絵画作品を制作。インターネットやデジタルデバイスなどの影響下にある現代の知覚や認識のあり方を、絵画に反映する浦川。そのストロークの重なりがつくりだす独特の奥行きを体感してほしい。

「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、浦川大志《一つの平面、もしくは複数の水平》

 自然における人為の介入をデジタル加工で模し、アニミズム的な自然観をテーマに写真作品を制作している写真家のayaka endo。カーテンにプリントされたチューリップを被写体とした大型作品は、街で日常目にする植物が写真というメディアを通して変容させている。

「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、ayaka endo《Untitled》

 CAF賞2018の藪前知子賞の受賞者であり、ヒップホップユニット「PICNIC YOU」のラッパー・ビートメイカーとしても活動する田嶋周造。身体や木々のフォルムを歪ませながら、複雑な陰影表現によって表す絵画3点が、強烈な印象を与えている。

「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、田嶋周造《COMPLETE LIFE》

 1997年生まれの漫画家、Yok’s Worthless Comicsは、生活のなかに溢れているマンガやアニメーション、映画表現や情報をとらえ作品を制作してきた。会場では80~90年代の匂いのするものをモチーフに、立体から平面まで多様な形態で表現された作品を壁面に構成した。

「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、Yok’s Worthless Comics《Yok’s too much vacance》

 「PARCO MUSEUM TOKYO」では、ほかにも以下の作家が展示を行っている。Akito Nara、菊池虎十、品川はるな 、TATSOKA、築山礁太、点子、Niko Wu、Victor Takeru、B=コヌミ×takatsugu saito、岡崎果歩、三好彼流、八木恵梨、YUSUKE WASHIMI、Lisa Bayne。

「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、手前がAkito Nara《homo sapiens in the e art h》
「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、B=コヌミ×takatsugu saito《B=conumi》
「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、YUSUKE WASHIMI《spin》
「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、Niko Wu《Awakening》
「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景より、左からTATSOKA《swave 04》、apartment×Kaho Okazaki《New Bird》

 なお、「P.O.N.D.」に参加したアーティストたちのグッズも「PARCO MUSEUM TOKYO」の特設ショップで販売している。こちらも見逃せない。

「PARCO MUSEUM TOKYO」の特設ショップ
「PARCO MUSEUM TOKYO」の特設ショップ

 地下1階「GALLERY X」では、アニメーションやインスタレーションなど、デジタルアートの分野で活躍する7名の作家が「TRANSFER」をテーマに作品を展示している。

「GALLERY X」の展示風景より、Ryohei Noda《Expansion》

 SATOHをはじめ、様々なアーティストのミュージックビデオを手がけ、ジャケットデザインも数多く展開しているShun Mayama。モニターと壁面への投影された映像とビニールや反射素材を組み合わせ、映像と空間が一体となった作品をつくりあげた

「GALLERY X」の展示風景より、Shun Mayama《山脈》

 2019年~2020年の石橋財団奨学金奨学生に選出され、ウィーン美術アカデミーに留学した沼田侑香。VRやAR、3DCGなどのバーチャル空間の拡張によって変わりゆく現状を、インスタレーションやアイロンビーズなど様々な手法で表現している。会場ではパネルと人工芝、そして英文を組み合わせたシンプルながらもメッセージ性の強い作品を展示した。

「GALLERY X」の展示風景より、沼田侑香《free way cola を持つ手》

 アニメーションの魔法的な魅力をテーマに制作を行うZECIN。JUMADIBAの楽曲「DAWN」のアニメーションによるミュージックビデオを展示しており、浮遊感漂う表現を見ることができる。

「GALLERY X」の展示風景より、ZECIN《DAWN》

 「GALLERY X」ではほかにも、Hana Watanabe、Ryohei Noda、Valentin Dommanget , Watakemiが展示を実施。生活の隅々にまでデジタルデバイスが入り込んだ現代の状況をいかにアートに昇華したのか、各作家の手腕を楽しみたい。

「GALLERY X」の展示風景より、watakemi《nodeHandsDaiagram》
「GALLERY X」の展示風景より

  また、「P.O.N.D.」では渋谷PARCOの屋外で展開される企画にも注目したい。

 渋谷PARCOのSING通り沿い西側壁面には、6メートルを超える大型のアートウォールが会期限定で登場している。壁面には、名古屋を拠点に活動するペインターのvugによる「ie akita.」のメッセージが笑いを誘うピンクの作品と、音楽やスケートシーンで注目を集めるイラストレーターのIDeeezによる「P.O.N.D.」の持つテーマをモノトーンのイメージで構築した作品を設置。訪れる際には見逃さないようにしたい。

渋谷PARCO西側壁面のvugによるアートウォール
渋谷PARCO西側壁面のIDeeezによるアートウォール

 さらに渋谷PARCOの建物の中央を貫く「ナカシブ通り」には、グラフィックデザインやイラストレーションの分野で異彩を放つアーティスト6名による大判フラッグが登場。COHAL、isanawada、櫻井万里明、nico ito、小林りゅうたろう、WAN_TANによる迫力のフラッグを、それぞれの表現が楽しめる。

ナカシブ通りのフラッグ
ナカシブ通りのフラッグ

  気鋭の作家たちの作品が集まった「P.O.N.D.」。まだ触れたことのない新たな世界を提示する表現に、渋谷PARCOで触れてみてはいかがだろうか。

「PARCO MUSEUM TOKYO」のエントランス