1928年に誕生したアメリカ文化のシンボル的キャラクターで、世界中で誰もが知っていると言えるミッキーマウス。そのミッキーマウスを愛する世界各地のアーティストたちによる「ファンの集い」をテーマに、それぞれのアーティストが独自の表現でミッキーマウスを解釈した作品が集まる展覧会「Mickey Mouse Now and Future」が、渋谷PARCO 4階にある「PARCO MUSEUM TOKYO」で開幕した。
本展は、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社の協力を得て実現したもの。キュレーションは渋谷の現代アートギャラリーNANZUKAが担当した。
展覧会には、ハビア・カジェハ、ユーン・ヒュップ、ジェームス・ジャービス、中村哲也、オリバー・ペイン、ダレン・ロマネリ、空山基、田名網敬一、Haroshi、Yoshirottenの10名が参加しており、本展のためにそれぞれの思い描いたミッキーマウスの新作が並ぶ。
NANZUKA代表の南塚真史によると、本展のきっかけとなったのは2018年にニューヨークで開催された「Mickey: The True Original」展。同展のキュレーションを担当したダレン・ロマネリと「もっとアートで特化した展覧会を企画して一緒にやりたいという話」が水面下であり、2年にわたる準備を経て本展が実現したという。
今回の出品作には、ミッキーマウスの特徴が共通のテーマとして表されながら、それぞれのアーティストの個人色も強く押し出されている。例えば、ニューヨークの展覧会にも出品した田名網敬一は、その代表的な奇形生物をミッキーマウスと組み合わせた印象的な絵画を展示している。
南塚は、「戦後の作家として現役の活動をしている田名網がウォルト・ディズニーから受けた影響は非常に大きかった。その歴史性は田名網がいることでしっかり証明されている。ハイプでやっている若い世代とは文脈が違うことが、本展の重要なポイントだ」と話している。
スペイン・マラガ在住のアーティスト、ハビア・カジェハは、水滴のような大きな目を持つ代表的なキャラクターをミッキーマウスと融合させた絵画や彫刻作品を発表。先週末より渋谷のNANZUKA UNDERGROUNDで開催されている個展のために来日したカジェハは、「ミッキーマウスはとても有名で特徴的なキャラクターなので、それを変えることは簡単ではなかった。しかし、今回の作品では私の特徴的な目とミッキーマウスは完璧にミックスされていると思う」としつつ、今回の企画について次のように語っている。
「ミッキーマウスは私たちのDNAのなかにいる。実際には年老いた存在だが見た目は若いままだ。20世紀初頭に誕生したミッキーマウスは、22世紀、23世紀にもずっと存在し続けるだろう。だから、今回の依頼を受けたときは非常に嬉しくて幸せだったが、同時に怖くて責任も感じた」。
なお本展にあわせて、渋谷PARCOの敷地内にハビア・カジェハと空山基がそれぞれ制作したミッキーマウスの大型立体作品がパブリック・アートとして特別展示。ミッキーマウスのデザインが施されたポップアップトラックも全国各地のパルコと大丸の店頭を巡回する。
コロナ禍の影響が続くなか、1世紀近く世界中の人々を魅了して大きな人気を博したミッキーマウスを再解釈しようと挑戦した本展の意義について、南塚はこう述べている。「世界中で一番愛されているキャラクターと、いま現役で新しい作品をつくっているアーティストたちが出会って展覧会を行うことで、皆さんを少しでも幸せにしたり、癒やしたりすることができればいいなと思う」。