東京都現代美術館からほど近い、ホームセンターのコーナン江東深川店。そのエントランスに11月1日の9時から13時にかけ、マーク・マンダースの《狐/鼠/ベルト》が設置された。
この作品は、今年3月から6月にかけて開催されたマンダースによる日本初の美術館個展「マーク・マンダース─マーク・マンダースの不在」でも展示されていたもの。その名の通り、作品は狐と鼠をかたどった立体がベルトでひとつにされており、狐が跳躍する瞬間をとらえたものだ。
美術館がホームセンターでこのように作品を展示するのは異例のこと。マンダース展のキュレーションを務めた東京都現代美術館学芸員・鎮西芳美は「もともとマンダースは美術館のために作品つくっているアーティストではない。活動の初期から自分の作品をスーパーマーケットに置いてきたこともある」と語る。
この作品も、マンダースが「ヴェネチア・ビエンナーレ2013」に参加した際、実際にスーパーマーケットに設置された経緯がある。当初、東京都現代美術館もマンダース展開催の際、今回のようなスーパーでの展示を計画していた。しかしながら緊急事態宣言などの影響もあり、実現はされなかったという。
今回のコーナンでの展示はマンダースの意向によるもの。作品返却の前に、一時的に当初の計画が実現した。
展示場所としてコーナンが選ばれたのは、美術ファンだけでなく幅広い人が滞在する場所、というマンダースの考えから。またマンダースは2019年の都現美リニューアルの際にこの場所を訪れており、それも理由のひとつとなった。コーナン側も、作品設置の提案を快く許可したという。
マンダースの意図を汲み取ったかたちとなった今回の展示。またこのような機会が訪れることを願わずにはいられない。