2018年、ルーヴル美術館で《Throne》を展示し、大きな注目を集めた彫刻家・名和晃平。このとき、同じくパリで開催された長谷川祐子キュレーションの「深み」展で展示された《Foam》が、さらに進化して金沢21世紀美術館に登場した。
巨大な展示室をまるごとひとつ使った、泡のインスタレーションである本作。名和がこの作品を初めて手がけたのは、2013年の「あいちトリエンナーレ」のことだった。
名和は「私は細胞や粒といった、単位の連続で造形を考えて彫刻をつくってきました」と語る。「泡は気圧や温室度、空調、二酸化炭素濃度から影響を受けやすい素材です。水と界面活性剤と泡の関係はやってみるしかわからないと思い実験を重ね、体で覚えていった。それが(作品として)実現したのが、あいちトリエンナーレ2013なのです」。このときのあいちトリエンナーレのテーマは「揺れる大地」。名和は、「大地から生命が立ち上がるような原初的な表現ができた」と感じたのだという。
そしてその後、新たにブルーの光を導入し、そのもとで《Foam》を見せてきた。「ブルーの光は動物の攻撃性を抑えると言われています。そこから転じて、植物の生命力を高めるとも考えられる。日常的に過ごす空間とはまったく違う体験をしてもらえたら」。
展示ごとに技術的にアップデートしてきたという本作。たしかに今回の展示では、これまでのどの作品よりも泡が高く屹立し、それはまるで氷山のようでもある。より彫刻的になったとも言える《Foam》。名和はこう語る。「ここまでアップデートできるのかと思い嬉しかったです。沢山の可能性が見えた機会となった。何も価値がない泡に、感受性を持って関わることで美しくなるということを感じてもらえたら」。
本展では、展示にあわせてサウンドスケープも制作。プログラミングによって二度と同じ音が聞こえないように設計されており、鑑賞者は空間に溶け込むような体験ができるだろう。
なお金沢21世紀美術館では、このほか大岩オスカールの大規模個展「光をめざす旅」に加え、長期インスタレーションルームで横山奈美の個展「LOVEと私のメモリーズ」、デザインルームで佐藤浩一の個展「第三風景」、そしてコレクション展「アジアの風景」を開催中。これらもチェックしてほしい。