金沢21世紀美術館が、若手作家を中心に個展形式で紹介する展覧会シリーズ「アペルト」。これまでNerholや武田雄介、西村有などを取り上げてきた同企画の10回目は、横山奈美による個展「LOVEと私のメモリーズ」を開催する。
横山は1986年生まれ、2012年愛知県立芸術大学大学院を修了。「愛とはなにか」「美とはなにか」をテーマに、造形されたネオン管を描いた油彩画のシリーズで注目を集める。画面には、美しい光と裏側の器具や配線が等しく描かれており、理想や憧れの後ろにあるものを顕在化させている。17年には日産アートアワードでオーディエンス賞を受賞、今年は本展と同名の個展を東京・ケンジタキギャラリーで開催した(1月18日~3月2日)。
本展では、「LOVE」「愛」といった言葉への疑問や違和感を問いかける近作のネオンシリーズのほか、少女と「ラブ」という名の犬との思い出の場面を描いた木炭ドローイングのシリーズも展示。あわせて約30点の作品で、「LOVE」を問いかけ追求する横山の表現にせまる。
また、これまで「lab.」シリーズなど実験的な取り組みを紹介してきた同館のデザインギャラリーでは、佐藤浩一による個展「第三風景」が開催される。
佐藤は1990年生まれ、2019年東京藝術大学大学院を修了。これまで人類学や植物学への関心から様々な境界線上を揺れ動く存在について考え、映像やインスタレーションだけでなく、音や香りといった非視覚的なメディウムを用いて表現してきた。18年には第12回資生堂art eggに入選。その後行われた個展「Crepuscular Gardens / 半開花の庭」(資生堂ギャラリー、2018)も記憶に新しい。
展覧会タイトルの「第三風景」は、著書『動いている庭』でも知られるフランスの庭師、ジル・クレマンが提唱した概念。都市の空き地や農村の放棄地、国境地帯などを、生物多様性を受け入れられる特権的な場として積極的に評価した言葉だ。本展ではこの「第三風景」を起点に、イチジクの生殖をモチーフとした《Mutant Variations》のほか、「人工湖」がテーマの新作を展示。人と人でないものの関係性のあり方を問う、佐藤の新たな試みを見ることができる。