横浜駅に直結するアソビル内にある「IMMERSIVE JOURNEY(イマーシブジャーニー)横浜」は、2024年12月にオープンした国内最大級の大型XR体験施設だ。2026年1月には愛知県名古屋市に「IMMERSIVE JOURNEY 名古屋」がオープン、また2027年春には広島での開業も予定されている。

仮想世界を実際に歩き回る臨場感
最初に体験したエジプト編第2弾「THE SECRET OF THE PYRAMID BUILDERS―ピラミッド建造者の秘密―」は、世界18都市で260万人が体験し、現在も好評のVR作品「Horizon of Khufu ホライゾン・オブ・クフ 古代エジプトへの旅」に続くコンテンツとなっている。


VRヘッドセットを装着すると、短いガイダンスが始まる。家族や友人などグループごとに同じ仮想空間に入り込み、お互いのアバターは名前入りで認識しながら進むことができること、ほかのグループも半透明のアバターとして表示されること、壁などの障害物に近づくと警告が出ることなどが説明され、安全面に気が配られていることがわかる。
古代エジプトの空気を間近に感じる
物語は古代のピラミッドの内部から始まる。石の質感の描写や室内の反響音など、細部まで綿密に描写されており、思わずどこまでも歩き出したくなる気持ちに駆られる。鑑賞者たちを物語のナビゲーターが、猫の女神・バステト、そして若きエジプト学者のモナだ。バステトとモナは、体験者の視線を巧みに誘導し、物語のなかに引き込み、ストーリーを進められ、ふたりの掛け合いを楽しく見ながら、仮想空間のなかで物語に没入することができる。
シナリオは、4500年前に古代エジプトの指揮官メレルが記したパピルス文書、そして最新の調査データや最新の研究成果をもとに構成されている。学術監修はハーバード大学のエジプト考古学者、ピーター・デア・マヌエリアンが、日本語訳の監修をエジプト考古学者の吉村作治がそれぞれ担当しており、最新の科学的視点で「ピラミッド建設」の秘密が明らかにされる。
近年発見されたピラミッド内部の巨大な空間や、ピラミッドの建材を輸送したナイル川や紅海沿岸の施設の様子、ピラミッド頂上からの景色などを、実際にその場にいるかのように体験することができる。ピラミッドの建設は、様々な国との交易や、土木技術の発達といった政治や技術、知識が発達していたからこそ実現できたという、当時の社会背景についての知識も深められる。


体験中に筆者がとくに印象に残ったのは、その体験のスケールの大きさだ。ピラミッドの頂上から見下ろした風景からはピラミッドの大きさを実感でき、ピラミッド建造に用いる巨大な石からも写真や本で読む以上に、身近にその土木技術の高さを感じることができた。これらの体験の鮮烈さからも、エジプトをより深く知ろうと思う人も増えていくだろう。
印象派誕生前夜のモネやルノワールに出会う
続いて体験したのは、「Tonight with the Impressionists Paris 1874―印象派画家と過ごす夜―」。2024年3月にパリのオルセー美術館で世界初公開された、印象派誕生にまつわる体験型コンテンツだ。

作品の舞台は1874年4月15日のパリ。パリ・オペラ座のほど近く、カプシーヌ大通りにあった、写真家・ナダールの旧スタジオで開催された、通称「第1回印象派展」会場だ。2フロアにまたがる会場には、クロード・モネやピエール=オーギュスト・ルノワール、エドガー・ドガ、カミーユ・ピサロにベルト・モリゾ、そして若くして亡くなってしまったフレデリック・バジールらも集い、理想の芸術を目指す彼らの熱気に溢れている。ナダールの写真館の間取りや、当時の配置を忠実に再現した空間は圧巻だ。



冒頭に登場するオペラ座周辺の景観や雰囲気も興味深い。工事途中のオペラ座やその近くにある1862年開館のカフェ・ドラ・ペ、そして周囲を取り巻くオペラ大通りやカプシーヌ大通りの雰囲気は、現在とは大きく変わりはない。しかし、大通りに走るのは自動車ではなく馬車であり、オペラ座の目の前にあるはずの地下鉄8番線出入り口はこの当時は存在していない。パリを訪れた経験のある人は、自分の記憶と目の前の風景に、一致する箇所と若干の違和感を感じられるだろう。この違和感がとても愛おしく感じられるのだ。


そして、舞台はナダールのスタジオから移動し、印象派にまつわる様々な場所へ移動する。ル・アーブルのホテルでは、モネがのちに《印象・日の出》(1872)と呼ばれることになる、日の出の風景を描いている。キャンバスの外に広がる、港町の広大な風景と赤い太陽、空を覆い尽くそうとする煙など、モネの周囲にあった空気を、画家と一緒に体感することができる。また、パリに近い新興行楽地にあった、水上レストラン兼ボート乗り場、ラ・グルヌイエールも訪れることができ、この地で仲良く並んで絵を描きながら絵画論を交わすモネとルノワールを間近に見ることができる。
なお、このコンテンツ内では、印象派展のメンバーたちが落選してしまった当時の官展、いわゆる「サロン」の展示空間にも足を踏み入れることができる。当時のサロンにはどういった作品が入選していたのかといった傾向や、作品がどのように展示されていたのかを知ることができ、それとは異なる潮流を生み出そうとした第1回印象派展と比較できるのも貴重な体験と言えるだろう。
歴史的瞬間に居合わせるという体験
近年、壁面にコンテンツを投影する、いわゆるプロジェクションマッピングスタイルの没入型できる施設が増えている。しかし、イマーシブジャーニーは、それらの施設とは異なり、VRヘッドセットで広い会場内を自分の足で歩き、「歴史的な瞬間に居合わせる」という、従来の没入型コンテツでは得ることができないかけがえのない体験が可能だ。
また、車椅子利用者もVRゴーグルを装着し、通常の体験者と同じコンテンツを同様に楽しむことができる。日本語のほかに英語・フランス語・中国語・スペイン語を選択できる多言語対応も行われており、幅広く人々に利用できる点も頼もしい。イマーシブジャーニーは今後、初のオリジナル作品となる「浮世絵」の世界に没入できる作品を公開する予定もあり、いままでなかった斬新なアートの楽しみ方を提案し続ける予定だ。まずは横浜の地で、歴史の瞬間に立ち会う体験を楽しんでみてはいかがだろうか。
































