久留米市美術館で「美の新地平—石橋財団アーティゾン美術館のいま」が開催中。青木繁やセザンヌを含む石橋財団コレクションの「いま」を80点で紹介【4/5ページ】

 石橋財団は2019年、カンディンスキーと同様に抽象絵画の発展に寄与したパウル・クレーの絵画24点を一括収蔵した。その後も収集を続け、現在は31点という質量ともに国際的にも有数のクレー・コレクションを擁している。

 第4章「パウル・クレー・コレクション」は、新収蔵作品を中心に初期から晩年までを網羅する12点を紹介。会場では制作年順に作品が並び、現実と抽象的フォルムを行き来しながら様々な手法を試みた画業の変遷をたどることができる。円熟期の作品《双子》(1930)は、幾何学的な構成と生命感を湛えた線が融合し、独特の温かみとユーモアを感じさせる。

左から2番目がパウル・クレー《双子》(1930)。2019年に石橋財団がパウル・クレーの絵画24点を一括収蔵したことは大きな話題を呼んだ

 石橋正二郎は1927年頃に美術品収集を始めたが、本格的に取り組むきっかけとなったのは、高等小学校時代の恩師である画家・坂本繁二郎との再会だった。久留米出身の坂本は、夭折した友人・青木繁の絵画作品が散逸するのを惜しみ、正二郎に作品を集めた美術館建設の願いを伝えた。その願いに応えた正二郎は青木の主要作品を入手し、次いで坂本らと同時代の洋画家や西洋近代絵画に目を向けてコレクションを充実させていった。

 第5章「日本近現代プラス」は、コレクションの礎となった日本近代洋画と、戦後に活躍した草間彌生や白髪一雄、田中敦子ら現代美術家の作品をあわせて紹介する。「久留米の方々に親しまれている青木の代表作《海の幸》や坂本の作品も展示に組み込んだ。収集の幅を広げつつ、原点となった近代洋画も変わらず大切にする姿勢を示すことができれば」と森が語る。

石橋財団コレクションのきっかけとなった青木繁と坂本繁二郎の作品が肩を並べる
具体美術協会のメンバーであった上前智祐や田中敦子、村上三郎らの作品も並ぶ

 その象徴的な展示が、同じ壁面に並ぶ近代洋画の巨匠・藤島武二の2作品だ。ローマ留学中の代表作《黒扇》(1908-09)は藤島の最晩年に正二郎が本人から直接譲り受けたもので、いっぽう、円熟期に制作された《東洋振り》(1924)は2019年に新収蔵されたものだ。西洋の女性を活気あふれる筆致で描いた《黒扇》と、東洋的意匠とルネサンス期の肖像画様式を融合させた《東洋振り》。日本独自の油彩画を追求した藤島の作風と技法の変化が見て取れて興味深い。

左から、藤島武二《東洋振り》(1924)、《黒扇》(1908-09)

編集部

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