久留米市美術館で「美の新地平—石橋財団アーティゾン美術館のいま」が開催中。青木繁やセザンヌを含む石橋財団コレクションの「いま」を80点で紹介【2/5ページ】

 石橋財団コレクションの基礎を築いたブリヂストン創業者の石橋正二郎(1889~1976)は、久留米市出身の実業家で、石橋美術館とブリヂストン美術館(アーティゾン美術館の前身)の創設者でもある。正二郎は戦後、欧米各地の美術館を歴訪し感銘を受けた経験をもとに、1952年にブリヂストン美術館を開設。56年には石橋美術館を中核施設とする石橋文化センターを郷里の久留米市に寄贈した。その後、石橋美術館は2016年に市が石橋財団から運営を引き継ぎ、久留米市美術館として再出発。もういっぽうのブリヂストン美術館は、20年に建物を新築し、アーティゾン美術館と改名したのは周知の通りだ。

 そうした両館の関係性もあり実現した本展は、全6章で構成される。第1章「抽象絵画」では、20世紀美術の一大潮流となった抽象絵画の展開が時代を遡るかたちで紹介されている。同館の8つの展示室のうち3室を使ったこの章はとくに新収蔵作品が多く含まれており、本展の大きな見どころとなっている。

 最初の展示室は、第二次世界大戦前後に米国で誕生した抽象表現主義にフォーカスし、ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニング、マーク・ロスコら代表的作家の絵画を展示。さらに、世界的に再評価が進んでいるものの国内では見る機会が少ない女性作家の、ジョアン・ミッチェルやエレイン・デ・クーニングらの作品も並ぶ。「描く行為」を重視したアクション・ペインティング(ポロック)や、カンバスに絵具を直接染み込ませるソーク・ステイン技法(ヘレン・フランケンサーラー)など、抽象表現主義における絵画の技法の多様性も確認できる。

「第1章 抽象絵画」の展示風景

 第2室の注目作品は、抽象絵画の創出に大きな役割を果たしたロシア出身のヴァシリー・カンディンスキーの《自らが輝く》(1924)だ。カンディンスキーがドイツの造形学校「バウハウス」での教官時代に描いた本作は、抽象絵画確立期の重要作品とされ、幾何学的な形と大胆な色彩が織りなす躍動感が見事。あわせて、同時期にパリで活動したチェコ出身のフランティセック・クプカの絵画や、イタリア未来派のウンベルト・ボッチョーニの彫刻なども同じ展示室に並び、抽象表現の同時多発性を伝えている。

絵画から彫刻に至るまで、様々な領域で抽象表現における多様性が見て取れる

編集部

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