矢野憩啓「フルーツバスケット」(BUG)レポート。絵画と言葉のあわいにまなざしを向ける【2/4ページ】

内と外をつなぐ、やわらかな境界

 会場でまず目に飛び込んでくるのは、その空間づくりの巧みさだ。カフェと併設されたガラス張りの空間を持つBUGは、東京駅を行き交う人々やオフィスワーカーたちの目に留まりやすい。作品を展示することを考えると、ガラス面の前に壁面を立て、その内側のギャラリースペースに向けて作品を展示することが一般的に想定される。そのうえで矢野は、展示スペースとカフェ空間が緩やかにつながるように空間を設計し、作品の展示にも工夫を凝らしている。

展示風景より

 また、展示空間内にも、矢野による「内」と「外」への意識が見受けられる。空間の左半分には緩やかなスロープがあり、中央には空間をふたつに分けながらも、その向こう側をのぞくことができるほどの高さの人工の生垣が設けられている。右半分には、天井高のある空間から滑らかに垂れるシアーカーテン、憩いの場を思わせるカーペットやクッションなどが配置され、絶妙なバランスの仕立てだ。

 このように、内と外が緩やかにつながる空間を舞台に、矢野が生活のなかで関心を寄せた物事や出来事などをモチーフに描いた絵画が点在している。それぞれの作品の設置方法や、作品同士の「間」の取り方にも、矢野の繊細な感性が光る。

展示風景より
展示風景より
展示風景より
展示風景より