BUGと歩むことで見えた新たな景色。向井ひかりインタビュー

アートセンター「BUG」で、第1回BUG Art Awardグランプリ受賞者・向井ひかりによる個展「ザ・ネイムズ・オン・ザ・ビーチ」が2月19日〜3月23日の会期で開催される。展覧会準備にまつわる実際の経験や、個展開催への想いについて話を聞いた。

聞き手=清水康介 撮影=平舘平

向井ひかり

 リクルートホールディングスの運営するアートセンター「BUG」で、向井ひかりの個展「ザ・ネイムズ・オン・ザ・ビーチ」が2月19日〜3月23日の会期で開催される。これは、「キャリアの支援」などを活動方針に掲げるBUGが主催する、制作活動年数10年以下のアーティストを対象としたアワード「BUG Art Award」の、記念すべき第1回グランプリ受賞者による個展だ。

 グランプリ展では、アーティストフィーとは別に、設営撤去費を含む作品制作費が300万円を上限にサポートされる。決して少なくない予算や、大企業のスケジュール感覚などは、まだキャリアの浅いアーティストの目にはどのように映ったのだろうか。展覧会準備にまつわる実際の経験や、個展開催への想いについて、向井に聞いた。

BUGと組むからこそできた体験

──グランプリを決定する「第1回BUG Art Award ファイナリスト展」の閉幕が約1年前の2024年2月ですが、そこからはどのような流れで準備を進めてこられたのですか?

向井ひかり(以下、向井) ファイナリスト展の撤去が終わってすぐに契約書を交わして、個展に向けてのスケジュールを作成しました。会期から逆算して、ここでプレスリリースを打つために、チラシはいつまでにできていないといけない、それならタイトルはいつまでに決めたい、とBUG側から提案してもらったのですが、こんなにも先まで見通しを立てるものなのかと驚きました。個人でつくる展覧会だとタイトルが決まるのも2ヶ月前とかなので(笑)。

 平均して月1回以上は何かしらの打ち合わせがあったことも、これまでの展覧会とは違う経験でした。広報物や会期中のイベントに関するものだったり、あるいは取材だったり。コンセプトなどは任せていただけましたが、BUGの担当者からは私のアイデアに対して客観的にどう見えるかなどを話していただき、壁打ちのような感じで進められました。

 また、展覧会の準備中に審査員の方々とお話ができたのもよかったです。もともと、アワードに応募したきっかけのひとつが審査員と話してみたいということでした。美術にかかわらず、プロとして注いできた時間を成果物として垣間見ることにワクワクするのですが、審査員の皆さんがご自身の仕事をおもしろがっている感じが魅力的だったんです。

 審査段階でも少しお話しさせていただいていましたが、私の個展についての具体的な相談というよりは、それぞれの仕事の専門的なお話などが伺えて興味深かったです。グランプリ個展に直接効果があるとは言い切れないのに、この贅沢な機会をつくっていただけたのは大変ありがたかったです。

「第1回 BUG Art Award ファイナリスト展」展示風景より、向井ひかり「対岸は見えない」(2024) 撮影=志賀耕太
「第1回 BUG Art Award ファイナリスト展」展示風景より、向井ひかり「対岸は見えない」のうち《はやいぬ》(2024) 撮影=冨田了平

編集部

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